遠野まごころネット

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12回目の東京報告会を開催、「現地の今を知りたい!」

2011年12月20日  21時34分

12月17日、千代田区飯田橋の東京ボランティアセンターで「行ってきたよ!遠野まごころネット 初めての災害ボランティア体験報告会」が開催されました。東京での体験報告会はこれで12回目となります。今回は約30名の参加者のうち、約8割をまごころネットの活動経験者が占めたことが特徴です。被災地が厳しい冬を迎えたことに加えて、12月4日よりまごころネットの活動拠点が遠野市総合福祉センターから浄化センターにすべて移転したため、少しでも現地の詳しい情報を入手したいという理由で出席された方が多く、真剣に耳を傾けていらっしゃる姿が目立ちました。

東京報告会の様子

冒頭では東京から遠野まごころネットへのアクセス方法や遠野での生活の様子などを紹介。その後、まごころネットで直近に活動した個人ボランティアの3名が登壇し、それぞれの体験談を語りました。室橋正行さんは10月に陸前高田市の上長部地区で活動。6反にも及ぶ広大な土地に麦まきをされたそうです。初夏のひまわりの時と同じように、ボランティアたちは自宅に戻ってからも畑に蒔いた種のその後を遠くからずっと見守っています。また、月に1回のペースで現地に通う南美佐さんは国内外から高い志を持って遠野に集結しているボランティアの方々との出会いの素晴らしさを伝えました。

半年以上にわたって釜石エリアでがれき隊の隊長を務められた吉野充さんも今回の語り部として参加してくださいました。箱崎地区に入られた当初はボランティアへの風当たりが強かったそうですが、活動を続けるなかで少しずつ地元の方々との絆が芽生えたこと、津波で集落の大部分が流された箱崎地区の根浜で6歳の女の子から「ママのおはかはどこ?」と聞かれたことが忘れられず、全力を注いでお墓参りのルートを整備したことなど―――とても数分間では語り尽くせない内容ゆえに、また別の機会にゆっくりとお話をうかがってみたいと思いました。このほか、グループトークや質疑応答では、まごころネット移転後の施設の状況や冬の装備などに関する質問が多く寄せられました。

 

また、今回は現地で活動しているボランティアから被災地の仮設住宅の現状を電話で直接リポートしてもらうという初めての試みを行いました。現地から中継してくださったのは、大船渡市で教育支援や生活支援活動を継続的に行っている「Whole Heart」の菅原聡さんです。現地の仮設住宅がいかに底冷えするのか、そして住民の方々がどうやって過ごしていらっしゃるのかということは、テレビや新聞などの報道だけではなかなか伝わってこない部分です。

菅原さんは仮設住宅内の冷え込みが想像をはるかに上回ることに驚かれたそうです。そもそも仮設を建設したのが夏場であり、短期間に多くの住宅を作らなければならないという事情があったにせよ、余りにも室内の防寒対策が施されていないのが現状です。壁の一部は鉄板がむき出しで、外の寒気がそのまま伝わってくる、天井に隙間ができている部分はテープで目張りしてあるだけで、室内の湿気も強いそうです。

「仮設のなかで一番寒いのはキッチン。立っているのが苦になるほどの床の冷たさなので、実際に暮らしている方々は本当に困っている。過酷な寒さに耐えながら仮設住宅で暮らしている方々がいらっしゃることをもっと多くのみなさんにも知って欲しい」と菅原さんは伝えました。仮設住宅には暖房器具(エアコン・コタツ・ホットカーペット)が配布されてはいるものの、各世帯の光熱費は自己負担です。今後の生計の見通しが立たないなかで、生活上の出費を切り詰める方もみられ、電気代がもったいないのでホットカーペットを箱から出していない方や、寒い日にはコートを着て寝ているという方もいらっしゃるそうです。1日に1000円を使うことすらためらうようであれば、出費の優先順位は食費にならざるを得ず、防寒対策までお金をまわすことができない方もいらっしゃるのが現実なのです。

仮設住宅で生活している皆さんが少しでも暖かい気持ちで新年を迎えて頂けるよう、Whole Heartではふわふわスリッパの配布や発泡スチロールと梱包用資材(プチプチ)を利用した防寒壁の設置に向けた支援活動に取り組んでいるそうです。「まごころひとつ持ってきていただければ、現地でやることはまだいっぱいあります」と東京報告会の参加者に語った菅原さんの言葉がとても心に響きました。

年内の東京での体験報告会はこれで終了となりますが、新たに内容をバージョンアップした報告会が1月以降も継続的に開催される予定です。初めてのボランティア活動を検討されている方や、まごころネットのリピーターの方など現地の今を知る情報収集の機会として、これからも東京での体験報告会をぜひご活用下さい。

(取材・文:高崎美智子)

「陸前高田市広田町大野地区のコミュニティ施設設営事業」は 「平成23年度(復興支援)被災者支援拠点づくり活動補助事業」の 助成金の補助をいただいています。