遠野まごころネット

遠野被災地支援ボランティアネットワーク遠野まごころネット

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もう一度、被災地に心の火を灯したい

2011年12月27日  14時00分

遠野市は岩手県沿岸部から少し内陸に入ったところにあり、山々に囲まれ、自然豊かな美しい景色をもつ町である。今回私たちを受け入れてくださったJA部に所属する農家のみなさんは、パワフルで本当に明るく笑顔の絶えない方たちばかりだった。それぞれの農家さんの持つ広大な土地には、水稲に限らず、色とりどりのお花やホウレン草、サツマイモ、大根、ワサビ、ピーナッツ、トウモロコシ、人参、大豆、時には牛など、数え切れないほど豊富な作物・家畜が育てられていた。農家ではこれらの作物を育て販売することで生活を営み、同時に収穫したものを近所の家々におすそ分けしている。
どこに行ってもみんな知り合いで、道で会えばちょっとした会話を弾ませ、近所の畑を覗いてみては畑作業を手伝ってくれる。そんな地域付き合いのおかげで、みんなで支え合える強いつながりがあり、遠野の町にはいつも笑顔があふれている。土まみれになった農作業、採れたての野菜の甘い味、家族のような遠野の人の温かさ。3月11日以前には、被災地にもこうした豊かな生活があったのだ。

私たちRINCは、「遠野まごころネット」の沿岸部ボランティア活動に参加し、釜石市箱崎町での瓦礫撤去作業と仮設住宅や在宅の被災者への訪問などに携わった。箱崎町は地盤沈下で復興計画が立たず、行政にも見放されている状態だ。それゆえ、被災6カ月を経た今、若い世代は町を離れ、高齢者のみが残されている。復興の手が進められにくく、未だ3.11のままの状態で残されている家屋もあった。
ひとつの班が一日一軒のペースで瓦礫撤去に取り組む。重機によって基礎部分のみが残された家屋からはガラス片や茶碗の破片、時にはくしゃくしゃになった日記や写真も出てきた。そういった瓦礫をボランティアで綺麗に掃除することが、きっと被災者の心に残る辛い記憶を少しでも取り除くことにつながる。ボランティアの作業は手間暇のかかる作業だけれど、だからこそそっと被災者の心の傷に寄り添い、生きる兆しを見つける手助けになるのではないかと思う。
前半の遠野での援農ボランティアを通して、私たちは農業を軸とした生活にはどれほど畑が重要なのか、またそこからつながる地域コミュニティがどれほど人々の生きる支えとなっているのかを身を持って知った。震災以前には沿岸部にも同じように農業、漁業といった生活基盤や人と人との密接なコミュニケーションの輪があった。しかし、いったんそれらがバラバラに壊されてしまった今、再びここに以前のような暮らしが戻るには一体どれくらいの時間がかかるのか。東京という大都会で便利な生活を送っている私たちにとって、瓦礫に覆われた畑を掘り返し、再び生活の基盤を作り直すという膨大な作業と労力に目が眩む思いがした。しかし、被災者の生きる活力を取り戻すためには、どんなに時間がかかっても再び農村を取り戻さなければならない。それには、これからもまだまだボランティアの力が必要なのだ。

東京へ帰ってくると、あまりの景色の違いに、改めて復興支援に対してこれからも関わり続ける責任があることを強く実感した。ボランティア活動で見たこと、聞いたこと、感じたことをたくさんの人に伝え、東北へ意識をもっともっと傾けてもらわなければならない。そして、まだまだ足りないボランティア人口を補うべく、新たな参加者の輪を私たちの周りから広げていきたい。広げなければならない。
少しでも多くの被災者にもう一度“心の灯”をともすことができるように。これこそがボランティアの目的である。

(記事:RINC 高橋直子)

「陸前高田市広田町大野地区のコミュニティ施設設営事業」は 「平成23年度(復興支援)被災者支援拠点づくり活動補助事業」の 助成金の補助をいただいています。