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遠野まごころネットが結んだ23年ぶりの家族の絆

北海道・利尻島でIT関連会社に勤める澤田冬海さん(29)は5日から、実に23年ぶりに遠野市に滞在している。幼いころに両親が離婚。社会に出るまで、母かおるさん(53)と暮らしてきたこともあり、遠野市在住の父方の祖父・三平敦夲(みひら・たいと)さん(82)とは、小学2年生の時から会えずにいた。

23年ぶりに遠野を訪れた澤田冬海さん

その敦夲さんは元大工の経験を生かして、3・11の大震災後に誕生したまごころネットの「82歳の日本最年長ボランティア」として全国のメディアで脚光を浴びていた。そして、父の三平廣幸さん(55)も4月上旬から、北海道の建設会社を休職し、故郷に帰って被災現場のボランティア班長として活躍していた。自身のルーツのある地域を襲った未曽有の大震災以降「私も何かしなければ…どうしよう?」と思い悩んでいた冬海さんの携帯に先週、年に1度は交流があった実父から突然電話が入った。「お~い。1回(遠野に)来ないかあ?」。声のトーンから明らかにお酒が入っているのは分かった。それでも、冬海さんは即答した。「じゃあ行く!」と。京都在住の母も「親孝行、じいちゃん孝行をしてき! ついでに観光もできてええやん」と明るく賛成してくれた。

史上初の「3世代ボランティア」(左から廣幸さん、敦夲さん、冬海さん)

すぐに、まごころネットに参加登録し「のどかな田園風景の印象しかなかった」遠野にやってきた。そして、この23年間「電話で数回話したことしかなかった」おじいちゃんと感激の再会を果たした。そして、まごころ史上初の〝3世代ボランティア〟として、3人そろって大槌町の被災地に通い、浸水した家屋の床張り作業などを一緒に励んだ。冬海さんは「おじいちゃんの大工姿がかっこよかった。私が子供の時には、もう引退していたのに、まさか今回見られるとは思いませんでした」とうれそうに話した。4年前から北海道に移り住み、昨年結婚。「昔は、おじいちゃんと電話で話しても、東北弁が全然わからなかったんです。でも、今回はすんなり理解できた。北海道と東北の人と文化のつながりを感じました」と新発見を喜んだ。美しい女性に成長した孫娘との再会に、敦夲さんも感激を隠さない。「目の中に入れても痛ぐねえげど、実際に入れてみたらすごぐ痛てえんだろな」と冗談と本音の入り混じった照れ笑いで話した。

3人一緒に床張り作業に励む

この遠野の地に「災害支援ボランティア組織」ができなかったら、きっと実現しなかっただろう祖父と孫との感動の再会。修復できなかったかもしれない家族の絆。日本全国、世界各地からボランティアがやってくる遠野まごころネットには、こんな素敵なドラマもある。