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0626 上長部公民館上棟式

上棟式のために華やかに飾られた上長部公民館

4月、地鎮祭は吹雪の中行われた。あれから、2か月が経った。
6月26日、上長部公民館は遂に上棟式を迎えた。天候は快晴、初夏を感じさせる爽やかな日だった。

雲一つない晴天の中行われた上棟式

段取りや炊き出しを含めた全ての準備は上長部更生会を中心とした上長部の住民の方々が主導となって行われた。

手際よく炊き出しの準備をするお母さんたち

12時を過ぎると先日植えた芝生を生かすべく、水撒き作業を行なってくれていたボランティアさんも集合!
炊き出しでふるまわれた汁物には「ごんこ」という魚。おかずには香りが食欲をそそるホタルイカの煮付け。これらの新鮮な魚介類はお父さんが朝3時に起きて海で捕ったもの。
お父さんとお母さんの愛情がたっぷり詰まったごはん。「いただきまーっす!」

丸太小屋で美味しいお昼をいただいたら、いよいよ上棟式の始まりです。

御神事がはじまり気仙大工のMさんにより祝詞が唄われた(Mさんはお社もつくる気仙大工です)。
区長、棟梁(とうりょう)が杯を交わす。公民館建設地は、神聖な空気に包まれる。古き良き日本の姿だった。こういった伝統ある式典は都会ではなかなか参加できないだろう。

飾り用の大きな紅白餅、餅まき用の可愛らしい小さなお餅はもちろんそれぞれお母さんたちの手作り。
やがてお父さんたちが木の骨組みの上に現れた。餅まきの始まりである。「行くぞー!ソレー!」かけ声が空高くこだまする。両手を広げて待つお母さんたちに向かってまく、まく・・・。

自分たちの住む上長部を守るために、お父さんたちは立ち上がった。
津波で水産加工工場から流れ出たサンマを拾い、押し寄せた瓦礫を片付けた。土中の瓦礫まで拾い出して田畑を取り戻した。種を撒いた。小麦を育てた。
やがてお父さんたちは「上長部更生会」として製材所を立ち上げた。

上長部公民館は「絆・ベルリン」様の仲介により、公益財団法人「ベルリン独日協会」様からご支援をいただいた。設計は、ドイツ人建築家のグーチョー様が担当し、上長部公民館の建設が実現した。
公民館にはきちんとした調理スペースを用意している。お母さん達が、加工品やお惣菜の販売ができるようにとの配慮だ。こうして、「けせん朝市」に出店する夢にまた一歩近づいた。公民館には、「上長部に来てくれるボランティアさんが汗を流せるように」とシャワー室も用意されている。

区長さんは挨拶で「一人じゃない、みんながいたからここまでやってこられたんだ」と言っていた。
「ありがとうございました」といつもボランティアを見送ってくれる区長さん。自分たちの上長部を守ろうとする気持ちと、上長部に来てくれたボランティアへの感謝がにじみ出る挨拶だった。

区長さんの挨拶には上長部への想いが詰まっていた

建設中の公民館に集い、祝杯をあげるお父さんたち。「こんなこと、昨年までは考えられなかったよなぁ」そんな声も聞こえてきた。

ずっと上長部地区に関わってきた遠野まごころネットのスタッフも同意見だろう。一緒に苦難を乗り越えてきたお父さんたちと、こんな風に笑いながらお酒が飲める日が来るなんて想ってもみなかった。
御神事が終わると、ふれあい広場に会場を移し、直会(なおらい)となった。丸太小屋ではホルモンが焼かれ、お酒が振る舞われた。「食え!食え!酒はここにあるぞ!」芝生の水まきボランティアさんたちにも声がかかる。喜びを分かち合いたいのだろう。

「いったいどんな公民館が出来上がるだろう?」と住民の方々の会話も弾む。グーチョ様の上長部住民に対する情熱、そしてお父さんたちが抱く上長部地区甦りへの強い想いがひとつになり、公民館というコミュニティスペースが作り上げられて行く。上長部公民館はドイツと日本の友好の架け橋!まさに絆から生まれた賜物である。

公民館の建設準備は着々と進む。明日には木工機も搬入される。製材所もいよいよ本稼働である。
しかし、まずは安全第一。お父さんたちのペースで、ゆっくり進めることが肝心だ。

上長部を支えるお父さんたち

「この次、こんなに人が集まるのは落成式だな!」

楽しみにしてるよ!お父さん!

(文・写真 山田エリナ)