遠野まごころネット

遠野被災地支援ボランティアネットワーク遠野まごころネット

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10月7日(日)宮ノ前・下船渡の住民で共同利用する下船渡公民館にて。震災後初の敬老会を兼ねた町内会の集いを開催しました。

2012年10月28日  12時15分

今年の夏前になるだろうか、公民館長・中田さんから相談をいただきました。


震災後、地域イベントは何もできなくなってしまった。
隣の宮ノ前公民館は津波で流されてしまった為、地域の人達が集まる場所がなくなってしまった。現在は下船渡公民館を宮ノ前・下船渡の住民で共同利用する事にしているんです。両地区のお年寄りは震災前、近隣にあるホテルを使って大々的に敬老会を開催しお年寄りが100人以上集まるイベントだった。しかし、昨年は震災があったため、敬老会はできなかった。『今年も敬老会はやらないのか?』
そう云われるたび今年こそは敬老会をやってあげたいなと思ってきた。そこで、まごころさんで協力をしてもらえないだろうか?」
お話を聞き是非協力させていただきたいとお伝えしました。

8月に入り再度連絡を入れてみると、「盆踊りを企画提案してみたが、地域の中で話合い、結果盆踊りはやらない事になった・・・」と残念そうに話していた。
「でも敬老会はなんとしてもやってあげたい。例年のように豪勢にしなくても、自分達のできる範囲でお年寄りに楽しんでもらいたいからね。できるなら子供達も集まれるように縁日のように屋台も出して両地区のみんなで楽しみたいな~」
その言葉に私も協力して絶対楽しい会にしたい!自分の目で見届けたいと思ったのです。

まごころネットとして何ができるか。

大船渡市内で活動している民間の団体は横の繋がりがよく、協力し合い活動しています。
そこで、このネットワークを活かし今回のイベントの主旨をお伝えしたところどの団体の方も皆快く協力して下さる事になりました。同時期に公民館長・中田さんも敬老会を兼ねた町内会の集いを提案。支援団体と一緒にやってみよう!と役員の方たちの気持ちも固まり、ようやく震災後 初の地域イベントを開催する事になったのです。

『敬老会を兼ねた町内会の集い』

開催日:10月7日(日) 
時間 :10:00 ~ 15:00
会場 :下船渡公民館
催し :2階  読書ボランティア おはなしころりん 民話の紙芝居(地元ボランティア)
         青森県津軽市 お坊さんによる講和(この為に青森から来て下さいました)
         大衆劇団 若松劇団による舞踊ショー(花巻を拠点に活動)
         フリーでカラオケなど

      1階 カリタスによるバルーンアート(大船渡市で活動する他団体)
        国境なき子どもたちによる牛乳パックを使った紙すきでハガキを作ろう
          (大船渡市で活動する他団体)

当日8:00集合。
役員、PTAのお母さん達、消防団、まごころネットメンバーで朝礼を行い一丸となって両地区住民を迎える準備。
まごころネットボランティアさんは屋台班。焼きそば・焼き鳥・綿あめを担当。



消防団の方と一緒にスタンバイ。
私たちが何かを準備しようとすると、「何か手伝う事あればやりますよ!」とPTAのお母さん。
自分達が今まで口にしていた言葉を掛けてもらえるなんて・・・嬉しかったですね。
一緒に楽しもうという気持ちがすごく伝わってくる雰囲気でした。
時間になると会場の半分以上はお年寄りでいっぱいに。
2階の状況を確認してから1階へ降りると、子供達がいっぱいになっていました。


タイムスケジュールを考えていたのに、そんなのお構いなし。
興味のあるところでキャーキャーはしゃいでいます。協力団体も沢山の子供達に囲まれ大忙し。
震災後、地域で集まることができなかったのは大人だけではなく、子供達も同じ。
今までずっとストレスを感じていたに違いありません。
外では杵と臼が用意され、蒸しあがった餅米が準備されました。
「もちつくぞー!子供達でやりたい子は外にこ~い」と大人の声。
「俺つきたい!」「あ~私も~」と子供達が外にやってきます。
子供と大人が交互に餅つきをしていきます。「よいしょ~。よいっしょ~」「それ!それ!」


大人も「懐かしいな~。」と言いながら楽しそう。
ここで印象的だったのが、宮ノ前公民館長・氏家さんが「○○君、もちついてみないか?」と声を掛けた時です。
地域の繋がりが希薄になっていると言われる現在、近所の子供達の名前を知っている大人がどれだけいるだろうか。
古き良き時代というか私の小さい頃を思い出す懐かしい光景でした。

屋外はと目を向けると、ボランティアさんが煙に巻かれながら焼き方に夢中になっていました。


周囲に、焼き鳥や焼きそばの美味しそうな匂いが漂います。


お手伝いしながらも地元の方々との交流も盛り上がっている様子です。
婦人部のお母さん達は「サンマのすり身汁おいしくできたから食べてみて」とボランティアさんへ持ってきてくれるなどの心遣いをいただき、とてもありがたいものでした。


2階のお年寄り達も気仙地区の方言を活かした紙芝居を夢中で見ては「あの辺りさ昔あったな~」なんで話で盛り上がっていました。その後のお坊さんの講話には役員の方々も聞き入る様子。講話の最後にはお経を皆で唱える場面も見られ今回の被害に遭われた方を弔う事もできたのではないかと思います。
そして若松劇団。舞台袖から出てくると「よ!待ってました!」の掛け声。


小物を使った演舞やその表情はとても見応えのあるものでした。
唯一の子役が出てくると会場中から拍手。「なんとかわいいこと~」とお捻りを頂いて「ありがとうございます。」その言葉にまた拍手。なかなか拝見できない大衆劇団の演舞に屋台班の姿もちらほらと・・・

震災後、敬老会ができなかった分、この日は大いに楽しんでいただけたようでした。
私は入口付近で撮影をしていましたが、下船渡公民館長が、宮ノ前公民館長の肩をポンと叩きそっと側に寄り添って座った姿には感動しました。
良かったな。両公民館が一緒になって地域住民の笑顔を取り戻すイベント。
秋晴れの空の下、気持ちが温かくなる場面が本当に多かったように思います。後片付けも皆で行い、公民館長さんから是非おつかれさん会に参加してほしいとのお声を頂き参加させていただきました。

その時、屋台班の方が「焼きそばを作る時に、ボランティアの人からどうやって作ればよいか?と言われた時、何にもできないのか・・と思って好きなように作って、と話した。その時よ、そのボランティアの人がこちらの地域の味があるでしょうから・・って言ったんだ。俺よ、こんなに気を遣ってくれてるんだと思ったら涙でそうでよ~。本当に助かったんだ。焼き方なんて本当に大変な役なのに文句ひとつ言わないで楽しんでくれてありがたかった~」と目を潤ませて話して下さいました。それぞれが楽しみお互いに感謝し合う、そして繋がる。素敵な事です。
最後には三本締めで無事に終わる事ができました。

今回は共同でイベントを盛り上げる事が出来たけれど、この地域なら来年、再来年と前へ進んでいけるのではないかと強く感じました。そして、宮ノ前公民館が再建できる日を楽しみにしたいと思います。

(撮影・文:夏井 真由美 写真提供:大谷さん(ボランティアさん))

「陸前高田市広田町大野地区のコミュニティ施設設営事業」は 「平成23年度(復興支援)被災者支援拠点づくり活動補助事業」の 助成金の補助をいただいています。