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ニーズとともに進化する「ふれあい隊」(2)

2011年8月01日  18時29分

これまでタッピングタッチによる活動を軸に、被災者の方々との心の交流を深めてきたふれあい隊だが、タッピングタッチだけがふれあい隊のすべてではない。ふれあい隊の本来の活動目的は「人と人とのふれあいを通じて、精神的にリラックスして頂くこと」。タッピングタッチはその手段のひとつであり、このほかにも被災者の方々がほっとくつろげるひとときを過ごせるよう、ニーズに応えた様々な活動の広がりが芽生えている。

花や緑に癒されます

ふれあい隊が初めて仮設住宅のなかで活動したのは6月11日。大船渡市蛸の浦地区の避難所でタッピングタッチを通じて知り合った方が近くの仮設住宅に移られたため、時々お宅に訪問させて頂くことになった。実際に仮設住宅というプライベートな空間のなかで、このような個別のフォローに早い段階から取り組むことができたのは、ふれあい隊ならではのフットワークの軽さと、良好な信頼関係があってこそ可能だったのだろう。仮設住宅への訪問をふれあい隊が開始してからは、よりきめ細やかなコミュニケーションが取れるようになり、住民の方からの率直な声や要望を聞く機会が増えた。 例えば、仮設住宅の玄関や風呂場などの段差でお年寄りや体の不自由な方が大変な思いをされていること。ある仮設住宅に訪問した時に実際に見せて頂いたが、お風呂場の湯船はかなり深く、足元に踏み台がなければまたいで湯船に入ることは難しい。脱衣所の入り口にも不自然な3段ぐらいの段差があった。また、仮設住宅のプレハブの屋根に何らかの形で暑さ対策が欲しいという声などもある。 何が求められているかという現場でのニーズ調査からは、「野菜育て隊」や「お花育て隊」、「お茶っこ隊」などの新たな取り組みも生まれた。花や緑があふれる生活は被災者の方々にとってこれまでごく普通のことだった。再び野菜や草花を育てる楽しみができれば、毎日の生活にもはりあいが生まれ、何よりも心がなごむ。実際に仮設住宅に入居された方々からは、「野菜やお花を育てたい」という要望が多く寄せられていた。

待ち遠しかった野菜の苗

7月3日に「野菜育て隊」がスタート。大船渡北小学校内の仮設住宅で野菜の苗と土を入れたプランター、じょうろなどを希望者に配布した。続いて「お花育て隊」もペチュニアや日々草の苗を仮設住宅に届けて多くの方に喜ばれた。「暑いなか持ってきてくれてありがとう」とお礼に冷凍庫のチューペットを分けてくださった女性。愛らしいゾウさんの形をしたじょうろを見て、「ピンク色と青色のどっちにしようかな」と嬉しそうな表情をする女性もいらっしゃった。実際に届けてみて花や緑のある暮らしがいかに求められていたかを痛感した。仮設住宅の玄関脇に置かれたプランターのひとつひとつには、みんなの思いや希望がいっぱい詰まっている。潤いのある日常生活を少しずつ取り戻すためのお手伝いをすることもふれあい隊の大切な役割のひとつだろう。

ゾウさんのじょうろも大好評

 

ほのぼのとした雰囲気を感じます

 

ふれあい隊は現在、週に1回のペースで大船渡の赤崎地区清水(しず)にある仮設住宅と後ノ入(のちのいり)の仮設住宅でお茶っこ会を開いている。7月12日に清水仮設の集会所で開いたお茶っこ会には8人の女性の方が集まってくださった。かつて避難所のタッピングタッチでお会いしたことのある方もいらっしゃった。甘酒やお菓子を楽しみながらおしゃべりが始まる。「テレビで避難所の様子を見たことはあったけど、まさか自分が避難所で暮らすことになるとは思ってもみなかった」、「何もかも流されてしまったけど、ここの海も3年か5年経てばきっと復活するから、いつか必ず帆立や牡蠣を食べにきてね」。津波が来た時のこと、生活に関する情報のこと、知人や友人の近況のこと、女性たちの話題は尽きない。そばでお話をうかがっているうちに、一緒に笑うこともあれば、胸がつまって涙がこぼれそうになることもあった。

話がはずんだお茶っこ会

約2時間にわたるお茶っこ会は和やかな雰囲気のなかでおひらきとなった。「今日はありがとう」、「本当に楽しかった。また来てね」。参加された方々は後片付けを終えて車に乗り込む私たちをずっと手を振って見送ってくださった。ほんのひとときでも楽しい時間を過ごして頂けたことが本当に嬉しかった。みなさんに手を振りながら「また、来ます」という言葉の重みを心のなかでかみしめた。 避難所から仮設住宅へと生活の拠点がシフトする流れのなかで、仮設住宅内においても住民が気軽に立ち寄ってお茶を飲んだり、おしゃべりをして気分転換ができる“縁側”のような居場所が今、切実に求められているという。 ようやくプライベートな住空間を確保できても、住民同士のつながりが希薄ならば安心して生活することは難しい。仮設住宅に入居したものの、知らない人だらけで隣近所の状況が分からない、全体のとりまとめ役となる方がまだ決まらず、自治会も機能していないという話もよく聞かれる。また、これまで避難所で共に暮らしていた人とのつながりがいかに大切なものだったかということに、仮設住宅に入ってから気づく人も多いそうだ。 もしも気軽にお茶を飲んで語り合えるような機会や場所があれば、住民同士の交流の輪が広がり、自発的なコミュ二ティも形成されやすいだろう。“縁側”のような居場所は生活に関する情報交換の拠点となり、孤独死や犯罪などを防ぐ抑止力ともなりうる。住民による新たなコミュニティの形成を支援しようとする動きもあちこちで芽生えてきており、ふれあい隊の「お茶っこ隊」もそのひとつの例だ。7月下旬からはお茶っこ隊にまごころネットの足湯隊がコラボレートするという新たな取り組みが始まり、双方がこれまで培った癒しのノウハウの相乗効果も期待される。現場のニーズとともに歩むふれあい隊の活動の模索はまだこれからも続く。

 (取材・文 高崎美智子)         <<(1)へ戻る

「陸前高田市広田町大野地区のコミュニティ施設設営事業」は 「平成23年度(復興支援)被災者支援拠点づくり活動補助事業」の 助成金の補助をいただいています。