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討議「震災の風化を防ぐ」「自立をさまたげない支援」とは(2)

Q.ボランティアと行政の連携について

松永秀樹さん(ファシリテーター): ボランティアと行政の連携について、会場から質問が届いています。

「平時であれば住民サービスとしてさまざまな支援ができるかもしれませんが、いまのような場合、行政が強い力を出さなければ、時間ばかりが経ってしまいます。いろんな問題があるにせよ、最大幸福のための施策をつくり、実行していくのが行政なのではないでしょうか。遠野まごころネットの方はイライラしませんか?」という質問です。

では、行政と一緒にやっていくことについて多田さんのご意見を聞きたいと思います。

A.官民がお互いにバックアップをする

多田一彦さん(遠野まごころネット): よく、行政の方に「民間意識を持て」という話がありますが、それは民間から行政に対する一方的な意見ではないかという感覚が私にはあります。逆に、民間に「官の意識を持て」ということも必要ではないでしょうか。

例えば、どちらかが一方のところへ行って、できる仕事をやってもいいと思います。

また、行政にお任せで何かをやってもらうということは、ある意味民間の責任転嫁ではないでしょうか。そういうやり方では物事が解決しないでしょう。

私は、必要なことなら官民のどちらがやってもいいと考えています。「自分ができることをやる」「官民がお互いにバックアップをする」「できる人ができるタイミングでやる」ということが大切だと思います。

松永秀樹さん(ファシリテーター): では、行政との連携の仕方について、NPOの大関さんに伺います。

A.国・県・市の役割を理解して提案を

大関輝一さん(NPO法人自立生活サポートセンターもやい): 被災地への支援を続けるなかで絶対に欠かせないのが行政です。ボランティアは、それぞれの仕事や生活があるため、最終的には支援活動の主体から引いていってしまいます。

ボランティアの力が必要な緊急時の支援から、ボランティアがやっていた活動を行政へと緩やかに引き継いでいく必要があります。「ボランティアがやってきた活動をどうやって行政に引き継いでいくか」については、ボランティア活動のひとつの大きなテーマだと思っています。

私が所属するNPO法人自立生活サポートセンターもやいの事務局次長が、現在、内閣府の震災ボランティア連携室に入っています。それによって、私も行政の人と話す機会が増えました。

それまでは、「なぜ行政はやらないのか」という考え方をしていましたが、付き合いが増えるなかで「官僚の◯◯さん」ではなく、「一人の◯◯さん」として見えてくると、その人の中に「(さまざまな支援を)やりたい」という気持ちがあっても、なかなかやれないということがわかってきました。

行政には壁があり、これはできるけど、これはできないということが見えてきました。

例えば、国へしなければいけない話を市にしてしまったり、市への話を県にしてしまったり、こちら側からすると同じに思えますが、実はものすごい隔たりがあります。そこに気をつけながらやっていくというのが、行政との連携のとり方として大事なことだと思います。

松永秀樹さん(ファシリテーター): こういう場所にくると、いろいろ厳しい意見を言われると思いますが、岩手県庁の鈴木さんに、ここまでの話を受けてのご意見をいただけますでしょうか。

A.関係各所との連携を進める

鈴木一史さん(岩手県庁 復興局生活再建課): 言い訳のようになってしまうかもしれませんがご容赦ください。

今回の震災については、行政改革や地方分権の関係で国から県、県から市町村へという流れでやってきたことがかなり裏目にでたのではないかと個人的には思います。

また、行政改革をすすめているなかで、「無駄を削減して人を減らす」といったことも裏目にでたと思います。

基本的に県職員は志を高く持っているつもりです。「こういうときに何をやらなければならないのか」というのは、常に考えています。

今回、支援を先に行い、後から承認が降りるという例がありました。

行政、役所はやりたいことはあるんだけどやれません。どんな分野でもそうですが、現在はひとつのセクタだけで解決できる社会ではありません。いろんなところと手に手を取って、情報連携しないと回らない社会になっていることを痛感しました。

松永秀樹さん(ファシリテーター): 鈴木さんはNPOの会議にも積極的にご出席され、NPOのフォローをしながら、「一緒にやっていきましょう」とシグナルを出されています。

A.NPOを「第三の公共に」

臼澤良一さん(遠野まごころネット): 役場の職員だった経験からこの震災を考えました。NPOやNGO、とくに遠野まごころネットの活動を見ていますと、NPO自体が新しい「第三の公共」になったほうがいいと思います。

それに対して官がお墨付きを与えて責任を持つということをしないと、この時代にスピード感を持って物事を決めるということはなかなか旧態依然の中で難しいのではないでしょうか。NPOを支援するだけではなかなかすすまないと思います。

鈴木さんが「こういう時代のなかでたいへん行政も苦しい」という話でしたが、NPOも新しい第三の公共としてお墨付きを与える仕組みを考えたほうがいいのかなと常々思っています。

A.各団体それぞれの強みを生かす

松永秀樹さん(ファシリテーター): 私はJICAから出向してNPO法人ジャパン・プラットフォームで働いています。NPOは、ひとつの団体で必要な支援をすべてできるわけではありません。

NPOにも行政のようななわばりの問題があります。NPOには「こういうことをやりました」と言ってお金を集めるというビジネスモデルがあります。

多田さんがおっしゃっていたことですが、NPOもそれぞれの強みを生かして壁を取り払うことがいいと強く感じます。

また、緊急人道支援は、なにが必要とされているのか状況が見えやすくて、クライアントが誰かわかりやすいです。炊き出しや物資の提供など比較的支援しやすいと考えています。しかし、復旧後期は時間がかかるようになってくるため、行政との連携が不可欠です。今、日本にあるNPO、NGOは、復旧・復興に携わったことがあるところはほとんどないかもしれなません。

どこもパーフェクトではありません。壁を取り払いましょう。枠を越えましょう。

A.お互いの組織を認めることがスタート地点

斎藤正宏さん(遠野まごころネット): 陸前高田市で、ある作業について、国や県から予算がついているものがありました。土建業者には予算がついています。「予算がつかない部分の作業には、ボランティアに頼みたい」ということで2回ほど話をしました。

最終的に「申し訳ないけど、ボランティアはただ働きのアルバイトではないのでお断りいたします」と伝えました。

いただいた予算については、きちんと緊急雇用で人を雇うとか、そういう発想を行政はすべきだと思います。

先ほどから、官と民の歩み寄りでサポートをしなければならないとか、お墨付きを得るという話がありますが、ボランティアとかNPO、NGOを一緒にやっていくパートナーとして見ていただかないと、この先の展望は難しいと思います。

この話は批判という意味ではありません。この先を、ボランティアであろうがNPOであろうが県であろうが、壁をつくるのではなく、あいつらは敵だというのではなく、どのように認めるか。それをやらないと先にいけません。

A.協力体制を築いて提案を

多田一彦さん(遠野まごころネット): これは行政がやることだ。民間がやることだという意識がどうしても残ってしまっています。どちらから、というのではなく、我々からその意識を取り除くことが必要です。

また、「こんなふうにすればいいんじゃないか」と提案することが大切です。少なくとも、先ほどの鈴木一史さん(岩手県庁 復興局生活再建課)が発表された復興のビジョンを見ている限りではそのベクトルは同じだと感じている。岩手県の復興は必ずいい方向に向かう。どちらからということでもなく、協力体制を築いていきたい。

松永秀樹さん(ファシリテーター): 多田さんの話のなかでも批判ではなく提案をしようというお話がありました。批判をするのは簡単です。「仕事ができているのか。現場に行けているのか」ということは、私自身も自問自答しています。

A.行政の方もたまには現場に顔を出してほしい

高宏竜太郎さん(遠野まごころネット): さんま隊を始めるにあたり、市役所の水産課の方に現場にきていただきました。最初の3〜4日間はお見えになりましたが、それから5カ月近く顔を見ていません。私は週に6日間ほど現場に行っていますが、市役所の方が来ている気配がありません。

当初、市役所の方には「高宏さんに作業をお願いするから、ぜひ最後までお願いします」と言われました。それは、構いません。最後まで自分はやります。

しかし、本当に最後までやってほしいと思うんであれば、たまには現場に顔を出して「ここまでやってくれた」とか、いろいろ言っていただきたい。

行政との協力が必要なのだから、せめて顔を出すくらいはしてほしいと思っています。

A.行政とボランティアの情報連携が必要

佐藤正市さん(遠野まごころネット) 行政とボランティアの連携については、いろいろな考え方があると思います。現場の人達はそれなりに一生懸命やっています。だから、行政とボランティアの情報連携が必要だと思います。

遠野市では、遠野市後方支援連携調整会議が月に二回、第二、第四水曜日に行われています。被災地にもそういう場があって、もっと情報交換ができるようになればいいですね。お互いに連携をしながらやっていくことが必要でしょう。

A.必要なときには足を運ぶ

鈴木一史さん(岩手県庁 復興局生活再建課): 「いらした方にはきちんと向き合う」「必要なときには足を運ぶ」ことが大切です。県庁のある盛岡にいるところが私の弱みだと感じています。

~つづく~

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