遠野まごころネット

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震災復興ボランティアに参加して感じたこと

2011年10月05日  18時13分

今年3月11日の東日本大震災には大きな衝撃を受けました。6000人あまりが亡くなった16年前の阪神淡路大震災のときもたいへん驚きましたが、今回は、大きな津波が見る見るうちに沿岸の町を呑み込んでいく様子がテレビで何度も放映され、また福島の原子力発電所の崩壊によって深刻な放射能汚染が起こり、大地震というものの恐ろしさというものをあらためて感じると同時に、こうした自然災害を目の前にして、自分はどう対処したらいいのかということ(ただ単に防災や避難のあり方ということだけでなく、こうした自然の脅威というものを人間としてどうとらえたらいいのか、ということ)について深く考えさせられました。

3月11日の震災の日以来、私も日本全国の多くの人々と同様、少しでも地震の被災地の人たちのお役に立てることはないか、と思い続けてきました。幸い、私の勤めている静岡市内の職場(静岡日本語教育センター[=外国人に日本語を教える学校])で、静岡県ボランティア協会との協力により、ボランティアバスをチャーターすることが決まり、職員や学生、一般ボランティアとともに、「遠野まごころネット」を通じて、期間としては9月30日と10月1日のたった2日間ではありましたが、活動に参加させていただくことができました。

私たちのグループが実際に活動を行ったのは、宿泊場所となった岩手県遠野市の遠野市総合福祉センターからバスで2時間ほど行った沿岸の港町・大槌町の個人の住宅の敷地でした。そこで、津波によって家屋・家財のほとんどが流されて、土台だけが辛うじて残っている状態の所に入り、屋根瓦やコンクリートの破片、ガラスの破片、その他の物をていねいに拾い上げて分別する、という作業をしたわけですが、その細かい作業を一つ一つ進めながら私は、かつてここに家があり、町があり、多くの人が日常生活を営んでいたのだということに思いを馳せ、この家の持ち主の気持ちはいかばかりであろうかと案じていました。そんな中、活動二日目に、そこの家の家主であるという女性が来られていて、少しお話をうかがうことができました。今回の津波でご主人とお義母様を亡くされ、ご自分と息子さんは辛うじて助かったとのことで、現在は「ここから電動自転車に乗って片道45分のところ」に仮住まいをしている、というお話でした。そんな大変な状況にありながら、この女性は、花が好きだから家の周りに花壇を作っていろいろな花を植えていた、というような話を穏やかな口調で話されていて、作業の休憩時間には何と全員にアイスクリームを配ったりまでしてくださったのですが、内心ではどれほどつらいものがあるだろう、と案じずにはいられませんでした。

もう一つ、今回「災害ボランティア」としての活動に初めて参加して感じたことは、阪神淡路大震災以来の経験と実績によるところが大きいとも思いますが、全国の一般の人たちの「少しでも被災地の人々の手助けをしたい」という思いからくるボランティア活動の意志や寄付などを効率的に集約するとともに、被災地のニーズを把握してそれに基づいて振り分けるという、それこそまさに、「遠野まごころネット」のような、NPOを中心とした民間のボランティア組織の担っている役割の大きさです。国や地方自治体などの公的な機関だけでは、これほどきめ細かな仕事はできないだろう、と思いました。私は、遠野市総合福祉センターでのガイダンスや、活動後のミーティングに参加しながら、かつて参加したことのあるJICAの青年海外協力隊の派遣前訓練の際の雰囲気に似ているな、と感じ、ちょっと “青春時代” に戻ったような気持ちになりました。当時、海外援助に関しては「JICAのような、海外援助に特化した公的な組織があるからこそ、現地のニーズに合った人材を効率的に派遣することができるのだ」と自分で納得していたのですが、今回のような自然災害に関わるボランティア活動においては、民間のボランティア団体の組織力というものが、絶対に欠かせない存在になっているのだということをつくづく実感した次第です。

今回参加した災害ボランティアとしての活動は、わずか2日間でした。一定の“達成感”と心地よい疲れとともに静岡に戻ってきた私たちは、翌日からまた、今まで通りの生活に戻っているわけですが、被災地の人たちには、地震・津波の痛手は今後も少なくとも数年間はずっと続くのだということを考えると、このツアーがただ、「いい経験をさせてもらった」「地震・津波の恐ろしさがよくわかった」などという感想を残して、過去の単なる思い出として終わってしまうようなことがないようにしなければなりません。これを機会に、私は今後もずっと、東北の被災地を見つめ続けていこう、と思っています。そして、より多くの人々に、この経験を伝えていきたいと思います。この場を借りて、お世話になった遠野まごころネットの方々にもお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。

(記事:山下博之)

「陸前高田市広田町大野地区のコミュニティ施設設営事業」は 「平成23年度(復興支援)被災者支援拠点づくり活動補助事業」の 助成金の補助をいただいています。