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大漁旗がはためく「第七箱崎丸」の進水式

11月12日、釜石市箱崎町で「第七箱崎丸」の進水式が行われ、住民のみなさんとボランティアが港に駆けつけました。進水式とは、船を初めて水に触れさせる儀式で、船が完成したお祝いでもあります。この日は「祝い酒」が港から大音量で響いていました。

かねてより「進水式にはボランティアさんもぜひ来てくださいね。」と箱崎の方からお招きをいただいていました。震災直後は被災地で窃盗団による被害があったため、“よそ者”であるボランティアに対する警戒と不信感がありましたが、お盆前の墓地清掃を行った頃から気持ちが通じ始め、住民のみなさんとの交流が増えていきました。仮設住宅での花の植え込みで大勢の方が一同に会する機会ができたり、郷土料理である「ひっつみ」をご馳走になったり。こういった経緯があり進水式に参加させていただくので、特に長期やリピーターで箱崎に関わってきたボランティアには大変嬉しく、またボランティア活動が認知され関係性が大きく変化してきていることの表れでもあります。

午前中の各現場での作業は11:30に切り上げて、歩いて港へ向かいました。壊れたままになった堤防が残っていますが、目線の先には色鮮やかな大漁旗がはためく船が水に浮かび、大勢の方が集まっています。近づいていくと餅まきが始まるのが見えたので、一斉に走り出しました。船にいる数名の方から投げられる餅を受け取るのは至難の業、ほとんどは一端地面に落ちたのを拾います。こんな時に運動神経の良さを発揮するのは少年たちです。続いて虎舞の奉納。多くが岩手県外からやってきたボランティアにとって、こういった伝統芸能に触れるのは貴重な体験です。

真っ黒に日焼けした海の男たちに会えたのも嬉しいことでした。普段のボランティア活動中は男性とお話する機会が少ないのですが、この日は漁師さんの生き生きとした表情・姿に触れることができました。
進水式という晴れの舞台ですが、深い傷を負いながらの船出でもあります。津波の第一波が引いた後、漁師さんは船の様子を見るために港へ行ってしまいました。そして壊滅的な被害をもたらした第二波に巻き込まれ、ほとんどの方は戻ってくることができませんでした。深い悲しみを乗り越え、漁師さんは再び新しい船に乗り込み、箱崎町のみなさんは送り出す。とても勇気のいる決断だと思います。

いよいよ船が岸壁を離れます。再び「祝い船」と汽笛を鳴らしながら、ぐるりと湾内を航行。紅葉した木々を背景に「第七箱崎丸」が悠々と水を切って進みます。近づいたり遠ざかる船を見ながら、様々な想いが胸にこみ上げてきます。

やがて船は港を出ていき、式は解散となりました。ボランティアは銘々のお気に入りの場所に腰を下ろし、持参した昼食をとります。時間がゆったりと流れていき、体を休ませながら進水式の余韻に浸ったり物思いにふけったり。若林班長は、地元のお母さんにいただいたというアワビの肝の塩辛をみんなに分けてくださいました。お酒に合う、忘れがたい味でした。ごちそうさま!

取材にご協力いただいた箱崎町のみなさん、船田総隊長、若林現場隊長、青柳班長、各現場の班長、ボランティアのみなさん、ありがとうございました。

▼撮影したたくさんの写真をムービーにまとめましたので、ぜひご覧ください。