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遠野まごころネット、「地域再生大賞」特別賞を受賞

2月23日、「第2回地域再生大賞」の表彰式とシンポジウムが日本プレスセンター(千代田区内幸町)で開催されました。「地域再生大賞」とは、地方の疲弊を打破しようと取り組む団体を支援するために、共同通信と全国46の地方新聞社によって2010年に創設されたものです。今回は全国から合計50団体がノミネートされ、遠野まごころネットは特別賞を受賞しました。

地域再生大賞 地域再生大賞

表彰式のなかで、遠野まごころネットの多田一彦代表が語ったスピーチの要約をご紹介します。

■多田代表の話

遠野まごころネットは普通にできること、あたり前のことをやっているに過ぎない。今回、このような評価を頂くことができたのは、本当にみなさんの力のおかげだと思う。現地ではまだがれき撤去などを行っているが、「開拓者魂を持って復興に挑む」を合言葉にボランティアたちは地域づくりに頑張って取り組んでいる。今、足りないものは「制度」だ。そして、あまりにもこれまでの震災についての検証が足りない。良い制度を作るには良いビジョンが必要であり、良いビジョンは十分な検証がなければできない。良い制度とは、みんなが使える制度、使いたくなるような制度でなければならない。

 地域再生大賞

 

「地域再生大賞」の受賞団体の多くは、過疎化や少子高齢化に伴う小学校の統廃合や買い物難民、限界集落、地場産業や伝統芸能の衰退など、日本各地の地域コミュニティがまさに直面している現実と同じ問題を抱えています。大切なふるさとを守り続けるために住民が地元の課題と果敢に向き合い、自らの手でリスクを取り、それぞれの地域の実情に応じた解決の糸口を見出すために限られたマンパワーで、地元にあるものを生かして自分たちにできることを工夫する―――地域や活動の内容、手法は違ってもこれらの団体の取り組みと遠野まごころネットの支援活動の取り組みにおいて、根底に流れるものには共通点があると感じました。  

今回の「地域再生大賞」で大賞を受賞したブルーリバー(広島県三次市)と、準大賞の大宮産業(高知県四万十市)は、いずれも深刻な過疎化による集落の生活インフラの危機を背景に抱えています。ブルーリバーは廃校寸前の地元の小学校を守るために住民有志が出資して賃貸住宅を建設。子育て中の若い世代の移住や永住を促すという取り組みをしています。地域の課題に取り組むにあたってブルーリバーの岩崎積氏は、「自分たちの弱点を知ることが重要」と指摘。「現金よりも地域に人が来てくれることが地域の利益になると考えている」と語りました。また、大宮産業は地元の農協出張所の閉鎖によって日用品やガソリンを買える唯一の場所が消えてしまうため、地区の住民が一人一万円ずつ出し合って株式会社を設立し、お店を存続させたそうです。大宮地区は市街地から数十キロメートル離れているため、日用品やガソリンを扱うお店は地元の人たちにとっては日常生活に欠かせない重要なインフラなのです。  

小学校の統廃合や買い物難民、人口流出による過疎化や地場産業の衰退などの問題は、東北地方の各地でも震災前から存在していた切実な問題で、被災地復興の延長上にある今後の大きな課題でもあります。大震災からまもなく1年が経過するなかで、被災地は今、復興に向けた新たなフェーズに移行しつつあります。これに伴い、遠野まごころネットにおける支援活動も新たなフェーズを迎えています。 

地域再生大賞 地域再生大賞

「がれきから創造へ」という多田代表の言葉が象徴するように、まごころネットの現地での活動は、がれき撤去などハード面での緊急支援から、地域コミュニティの再生に向けた新たな産業や雇用の創出、被災された方々の暮らしや心のケアの部分を見守るパーソナルサポートなど、それぞれの地域の将来を見据えた長期的な支援にシフトしつつあります。道路や堤防、建物など公共インフラの再構築のみならず、従来から地方が抱えてきた過疎化や地域コミュニティの衰退という課題自体に取り組んでいかなければ被災地の本当の復興にはつながらないからです。  

岩手県沿岸部の現地では地元の方々が主体となって、遠野まごころネットがそのサポートをするという形で、地域の復興に向けたさまざまな取り組みも新たに動き始めています。例えば、買い物や病院に通うための移動手段としての「乗り合いタクシー」や、地元の方々が買い物をするための「仮設商店街」、生きがいづくりや雇用の場を生み出す「まごころの郷」などがあります。震災からの復興の延長上にあるこれからのまごころネットの取り組みは、疲弊した地方の活性化を考える上で、大きなヒントにもなる取り組みではないかと考えられます。今回「地域再生大賞」の表彰式で東北の被災地が抱えている復興に向けた課題は、日本の地方全体が抱えている課題や未来にもつながっていると強く感じました。 

(取材・文:高崎美智子)