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上長部地区新公民館 地鎮祭

4 月 4 日、陸前高田市気仙町上長部にて、新しい公民館建設工事着工のための地鎮祭が行われました。

この地域は、今回の津波で、家屋や田畑を含め村の約 2/3 を失い、また 8 名の犠牲者(高 田市内を含めると 15 名)を出しました。隣接する湊や今泉の集落も壊滅的な被害を受け、 行政区としての復活は現在も厳しい状態にあります。

私たち遠野まごころネットが上長部の人々と出会った昨年 4 月、この地域は見渡す限りの瓦礫と、近隣の冷凍倉庫から流出した膨大な冷凍水産物で覆われていました。それはまさに、言葉を失い、立ち尽くすしかないような光景でしたが、現地の方々と、延べ 10,000 人を超えるボランティアの 12 ヶ月間の奮闘により、今では畑に野菜や麦が育ち、作業小屋や製材所も建設されました。これらの建物は、現地の方々が津波で立ち枯れた気仙杉を伐りだして建てたものです。

こうした活動(地域づくりサポート事業)は、海外の支援団体からも徐々に知られるようになり、昨年 12 月にはアメリカのバプテスト教会・東北ケア様から仮の集会所としてのプレハブ棟をご支援いただきました。またアジアンロード(モンゴル)の方々にはゲル 建設を手伝っていただきました。そして今回はドイツの独日協会様と絆・ベルリン様からのご支援で公民館が建てられます。

午後 3 時、雪まじりの強い風が吹き抜ける中、ドイツ・アメリカ・モンゴル・日本、そして遠野まごころネットの旗が竹竿に掲げられました。お父さんたちの「ドイツの旗を掲げよう」という言葉からはじまったものです。

 

ドイツ・アメリカ・モンゴルの皆様、本当にありがとうございました。

その頃、ドイツ大使館から参列予定だったアイルリッヒ参事官は、仙台駅で 2 時間近く足止めされておられました。日本列島を覆った爆弾低気圧はなかなか弱まりません。お迎えの車を、急遽、北上駅から一ノ関駅に走らせましたが間に合いませんでした。残念ながらアイルリッヒ参事官は東京に戻られることとなりました。

上長部会場の天気は吹雪混じりとなりました。しかしお父さん達、おがさん達は誰も帰ろうとはしません。当初は公民館建設予定地で予定されていたお神楽の奉納を、できたての製材所の中で行うことに変更しました。お父さんたちは、突貫工事で舞台をつくり、風よけシートを張って、あっという間に上長部劇場(シアター)を生み出しました。全くお父さん達の技には脱帽させられます。

母さんたちもボランティアさんたちと、豚汁の炊き出しを始めます。

大槌まごころ広場からは、ご祝儀としてまごころ弁当が配られ、たい焼きの実演も始まりました。

炊き出し鍋からは、もうもうと湯気が上がります。熱々の豚汁も振る舞われ、みんなの冷えた体を温めてくれました。

待ち時間には、お父さん方がのど自慢を始める一幕もあり、笑いを誘います。

日頃お目にかかれない村の方々向けに、上長部で活動するスタッフの紹介も行われました。

 午後 3 時 40 分、ドイツからのお客様を乗せたバスがようやく到着しました。

いよいよ地鎮祭の始まりです。まずは月山神社の神職さんのお導きで、慰霊の黙祷。 次はお祓いです。公民館建設予定地の四隅(よすみ)が清められます。 続いて祝詞奏上(のりとそうじょう)。津波による被害から立ち上がった村の人々によって公民館が建てられることのご報告と、安全の祈願が行われました。 鍬入れの儀(くわいれのぎ)では、「えいっ、えいっ、えいっ」という力強いかけ声で、 区長さんやドイツからのお客様、まごころネットの荒川副代表による祈願が込められます。 最後は、玉串奉奠(たまぐしほうてん)により、銘々の祈りが込められました。 吹雪の中で執り行われる、決意に満ちた厳粛な御神事。「いよいよ公民館ができるんだなぁ」という想いが心に滲みました。

地鎮祭の後は、急ごしらえの上長部劇場に戻り、神職さんによるお神楽の奉納を受けました。

「悲しみ、希望、未来をともにしたい。公民館がドイツとの友情の証しとなることを願う。」地鎮祭に集まった上長部の方々に向けて、ベルリン独日協会様の竹谷宗久様から贈られた言葉です。そして菅野誠喜区長様に、上長部公民館建設のための支援金6万6千ユーロ(約 710万円)の銀行小切手模型が手渡されました。また、参事官より先に来られていたドイツの皆さんの代表から、アイルリッヒ参事官に託されたスピーチもいただくことができました。

その脇では、豚汁鍋がほかほかと湯気を立てています。

 

春まだ浅い上長部の夕暮れ。

記念撮影をした後、すっかり打ち解けたドイツからのお客様のお見送りの時間となりました。

上長部の寒空に、習いたての「ダンケ・シェーン(ありがとう)」が幾度も響き渡ります。

「ダンケ・シェーン!  ダンケ・シェーン!」

上長部の人々にとって、この日の地鎮祭は、自らが切り拓いた新たな未来の幕開けだったのではないでしょうか。

そして、陸前高田市内のひとつの地域が、復興への道のりを着実に進んでゆく姿は、 多くの人々にとって、ひとつの希望の火として映るはずです。

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龍神様の郷、上長部。

この日、終日続いた、地上の全てを吹き飛ばさんばかりの荒ぶる強風は、

上長部公民館の地鎮祭を祝福してくれた龍神様からの、

ちょっと気前のよすぎる贈り物だったのかな、と誰知らず思った一日なのでした。

 

上長部区長 菅野誠喜様

駐日独大使館 アイルリッヒ参事官

ベルリン独日協会副会長 竹谷宗久様

絆・ベルリン代表 福澤啓臣様

建築家 グーチョ・ヨルク様

陸前高田市総務部長 細川文規様

市会議員 菅野稔様

コミュニティ推進協議会会長 菅野昌雄様

そして上長部の皆さま

ご参列ありがとうございました。