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吉里吉里の森から

 吉里吉里の海を望む小高い山中。

 その鬱蒼とした森の中に分け入り、黙々と作業する人たちがいます。

 

 

 

 二重に手袋をしたその手には、鎌、ノコギリ、鉈(ナタ)。人によっては小さなエンジンの付いた刈り払い機(草刈機)。そして腰には、熊よけの鈴。

 けして高くはない山ながら、 場所によっては急な斜面を含む、複雑な地形の山肌を、汗だくになりつつ、毎日少しずつ綺麗にしています。

 ここでは今、ひとつのプロジェクトが動き始めています。

 高台を切り開き、新しい吉里吉里保育園とお年寄りの為のグループホーム、滞在型のコテージ、そして、自然に親しみ、環境保護について学ぶ「森の学校」などを作ろう、というプロジェクトです。

 高台に保育園やグループホームを作るのは、もしまた津波などがあった時、家族がここに駆けつければ、そのまま避難所としての機能を果たせるように。

 そしてなにより、自分たちの暮らす町や海の姿を、四季折々、常に感じて過ごせるように、という思いからです。

高台からは吉里吉里の町と海を見渡すことができます。

 今はまだ、様々な樹が生い茂り、雑草やツルが行く手を阻む状態ですが、ここで作業するボランティアさんたちの頭の中には、遠野からの移動途中に隊長から示される一枚の絵があります。

 まだ未確定な部分もあるので、あくまでもイメージ図ですが、今回は特別に、その図案の一部をお見せしましょう。(※あくまでも2012年6月時点でのイメージ図案の一部です)

 

 いかがですか?

 みなさんの胸にも、ここで遊び、駆け回る子どもたちの姿や、にこにこと談笑するお年寄りたちの姿が、ちょこっと浮かびましたか?

 プロジェクトはまだ動き出したばかりで、資金も人手も十分ではありません。まだまだ多くの支援を必要としているのが現実です。

 それでも、大槌町をはじめ、多くの方からの賛同と期待を集めています。

 

 まずは出来るところから動き出すーー。

 山肌にへばりつくようにして作業をすすめるボランティアたちの胸には、このプロジェクトを自分の手で実現させたい、少しでも力になりたい、という強い思いがあります。

 

ガレキ撤去に勝るとも劣らないハードな現場を笑顔で仕切る隊長

 折しも季節は夏の入り口。

 しかしながら、虫刺されや雑木による擦り傷や怪我を防ぐため、みんな長袖&長靴、そしてヘルメット。

 額からしたたる汗がときおり美しく見える気がするのは、

 樹上から差し込む強い陽差しのせいばかりではないかもしれません。

 

( 写真・文 映像班 )