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討議「震災の風化を防ぐ」「自立をさまたげない支援」とは(1)

9月11日東京報告会の第三部全体ディスカッション・質疑応答では、遠野まごころネット事務局、岩手県庁、大槌町社会福祉協議会、NPO法人自立生活サポートセンターもやいなど、第二部までに発表を行った11人が登壇し、会場から集められた質問に答えました。

ディスカッションのファシリテーターは、東日本大震災で被災者支援を行っているジャパン・プラットフォームの松永秀樹さん。松永さんは、4月初旬から遠野まごころネットと協働して被災地の支援活動を行っています。

おもなテーマは「震災の風化を防ぐ」「ボランティアと行政の連携」「自立をさまたげない支援」の3つ。遠方からは見えにくい被災地の現状と、関係者それぞれの関わり方を伝える貴重なディスカッションとなりました。

ディスカッションにご登壇いただいた方々(左から。敬称略)
岩手県 復興局生活再建課 課長 鈴木一史
自立生活サポートセンターもやい 大関輝一
被災地NGO恊働センター 増島智子
遠野まごころネット 吉田慶
遠野まごころネット 斎藤正宏
遠野まごころネット 副代表 菊池新一
遠野まごころネット 代表 佐藤正市
大槌町社会福祉協議会 総務係長 川端伸哉
遠野まごころネット 副代表 多田一彦
遠野まごころネット 臼澤良一
遠野まごころネット 高宏竜太郎
ジャパン・プラットフォーム 岩手代表 松永秀樹

Q.震災の風化について

松永秀樹さん(ファシリテーター):この報告会の大きな目的のひとつは「震災の風化防止」です。被災地の岩手でも津波被害のあった三陸沿岸部とそれ以外の地域では状況が違います。ましてや東京や四国、九州ではどうでしょうか。

A.被災地から離れると感度が落ちる

斎藤正宏さん(遠野まごころネット) :私は主に沿岸被災地で活動をしていますが、ここ3週間は遠野市にある遠野まごころネットで内勤をしています。

被災地へ行かないと現地の動きがわからなくなってくるのは、ボランティアとして岩手にいる私たちも同じです。被災地からの距離が遠くなると感度が落ちていくのを感じます。この「感度が落ちる」というのが風化の原因ではないでしょうか。

A.被災者からの「情報発信」が必要

臼澤良一さん(遠野まごころネット): 大槌から遠野に来ると戦場から平和な町に、花巻に来ると3.11以前の通常の町、そして東京の広尾(JICA地球広場)に来ると「ここは本当に日本なのだろうか」と感じます。三陸とは全く違うというのが実感です。

ここ数日、東京に滞在していろんな方に私の被災体験をお話ししました。私はいつも「神に生かされたと感じる」と伝えるのですが、そのときに、笑ってメモをとっている方もいらっしゃいました。それを見て「もう3.11は日本の歴史から消え去ってしまったのか」と感じます。

被災者はもっとこれから情報を発信していかなければならないと思いました」。

会場への質問

Q.震災の風化を防止するにはどういった対策が考えられるでしょうか?

A.積極的な広報活動を行う

参加者(女性): 私は「山田町応援団」として、山田町を支援するポスターをつくり、いろんなお店に貼ってもらえるように頼みこんでいます。なんの後ろ盾もない個人ボランティアなので、正直、お店の方との温度差にくじけることもあります。

ポスターを貼ってくれたお店のURLを山田町応援団のサイトで宣伝するという活動です。

A.マスコミと政治家を上手に動かす

参加者(女性): マスコミと政治家を上手に動かすことが大切ではないかと思います。

松永秀樹さん: 以前、私がJICAで働いていた経験でいうと、NPO法人は事業仕分けの対象として活動内容を厳しく精査されるのが普通でした。しかし、遠野まごころネットについては、多くの政治家が視察に訪れるなど、逆の現象が起きています。それについて多田さんからご説明いただけますでしょうか。

A.活動の理解者に協力してもらっている

多田一彦さん(遠野まごころネット): 政治家やマスコミの方々に多く来ていただいていますが、それによって活動を変えない。政治家がくるからといってスケジュールを変更しない。あくまでも第一は「被災地と被災者」ということをご理解いただける方に協力していただいています。

A.選挙で適切な政治家を選ぶ

佐藤正市さん(遠野まごころネット): 政治家やマスコミを上手に動かすことも大事ですが、一番大切なのは、私たちが適切な政治家を選ぶことです。

また、政治家やマスコミの方には、遠野まごころネットのミーティングでもなんでも公開しています。そうすることで組織の緊張感を保つという効果をもたらしています。

A.ボランティア希望者やリピーターをフォローする

参加者(男性): 株式会社岩手県北観光でボランティアを被災地へ送迎するバスツアーを行なっている佐藤と申します。

弊社で実施しているボランティアバスツアーの催行状況をみると、震災から半年経った9月現在でも満員御礼がかなり多くあります。

表面上は震災への関心が薄れているようでも、中にはまだままだ災害ボランティアをやってみたいという方もいらっしゃるようです。そうした方からの問い合わせもかなりきています。

ボランティア希望者を大切にフォローして、迷っている方が来やすい環境をつくることが大切だと思います。一度、現地を見てもらえれば、なんらかの形になると考えています。

また、企業によるボランティアバスの貸切ツアーの問い合わせについては、8月から再度増加傾向にあります。こうした勢いをつなげていくことが大事ではないでしょうか。

Q.企業からの支援状況について

松永秀樹さん(ファシリテーター): ここまでの報告で、遠野まごころネットと企業の連携については、あまりふれられてきませんでした。遠野まごころネットと企業の連携について菊池さんからお話を伺えますでしょうか。

A.組織の力が継続的な支援に生きる

菊池新一さん(遠野まごころネット): 企業・団体には組織の力があります。現在、大阪のある団体が、物資・人の両面で継続的な支援を行なってくれています。今年いっぱいは継続してくれるとのことです。

遠野まごころネットでは、その人たちが来た証を残せるよう、長部なら長部といった特定の地域で活動をしてもらい、5年、10年先に、またその人たちがその地域を訪れるようになってほしいと考えています。うまくいけば、ひとつのモデルケースとなるでしょう。

~つづく~

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