静岡英和女学院高(静岡市葵区)の「ホームクラブ部」の生徒9人の考案した特製菓子パンとスイーツが10日、大槌町大ケ口につくられた被災者のための憩いのスペース「まごころかけはし」で振る舞われ、用意した170個がわずか20分でなくなった。
昨年11月に静岡県が「地産地消」をテーマに実施したコンビニ王手のローソン、山崎製パンとのコラボ企画に採用された特製パンで、5月27日に同町「まごころ広場」で配布した「イチゴのメロンパン」ら2製品に加え、静岡名産のお茶を素材に加えた新商品「クレープロールケーキ」「お茶のディッシュロール」が、仮設テントに到着すると列をつくって待ち受けていた約30人の住民が、目を輝かせてできたてのパンを手にとり始めた。
大ケ口地区は、ほとんどの家屋が津波の襲来からは免れたが、電気や水道などのライフラインが長期間断絶していただけでなく、流出した海岸寄りの集落から家族や親類を頼って数多くの方々が個人宅に避難。198世帯630人だった地区の人口は現在、900人を超えている。各家では、震災直後から大人数が不自由な生活を余儀なくされているにもかかわらず、自宅を失った方々が集まる避難所や仮設住宅ではないというだけで、食料や水、生活必需品などの支援物資がほとんど届いてこなかった。「ありがたいですね。まごころがこもっていて本当においしいです。人は食べ物がないと生きていけませんからね」と70代の女性が両手を合わせながら話した。
今回、初めてパンの配給のため現地入りした同校の生徒2人は、予想をはるかに超える盛況ぶりに驚きを隠せなかった。
同部の部長を務める朝比奈沙季さん(2年)は「テレビで見ていたものとは全然違う(被災地の)光景にショックを受けました。本当に困っている人たちに喜んでもらえてよかったです」と話した。震災直後から校内で募金活動や毛布、支援物資の拠出を呼びかけてきた同校生徒会の前宗教委員長・内野友莉さん(3年)も「実際に被災地に来て、本当によかった。今日のことをしっかり友だちや家族に伝えます」と語気を強めた。