大槌町の桜木町に「上長部更生会」が製作したベンチ3基が置かれることになった。上長部更生会はみなさんお馴染みの陸前高田市気仙町上長部で活動している地元の元気なお父さんたち。ベンチを寄贈したのは「花道プロジェクト」。大槌町の20~30代の若者が主立って活動している団体である。
上長部更生会が使用する木材は全て立ち枯れ杉。もちろんこのベンチも津波をかぶった杉である。陸前高田市と大槌町は共に被災を受けた地域だが、その惨状は異なる。今回は、上長部更生会のお父さんたちがつくったベンチを、大槌町の桜木町へ運んだ。被災地と被災地を繋ぐベンチ。「買ってきたベンチではなく、せっかくなら上長部のお父さんたちがつくったベンチを桜木町に置きたいと思った」と花道プロジェクトの方が話してくれた。
5月には地域の人たちで花壇をつくった。この時も、上長部更生会が製材した木から出た木端やおがくずを使用。既にちょっとした交流は始まっていた。
花道プロジェクトとは「大槌町をバスケットボールを通じて復興支援・町おこしをする企画」。春に「桜木杯」、そして今月28日には「仙道カップ」と名付けられたバスケットボールの大会が開催された。地元の若者達がバスケットボール練習、大会を開催し、町内外から人を呼び込むことで大槌町に活気を与えている。
さらに花道プロジェクトは「桜木町」という地名にちなみ、「桜がたくさん咲いたら桜木町が観光名所になるのでは?」と考え、「桜の花道を、河川敷に桜を咲かせたい」と活動してきた。残念ながら県からのGOサインは出なかったものの、「山の避難道に桜を植えよう」という新たな計画もある。「周辺産業を活性化させるために人を集めたい。ボランティアも作業員もみんないなくなった時に、大会やイベント、観光を通して若い人が来るようにしたい」と話す。
地元の活性化のため様々なことに取り組み、チャレンジしている大槌の若者。上長部更生会も花道プロジェクトも、自分たちの故郷のため、そして故郷の仲間たちのために動き出している。こうしてお父さんたちや、若いお兄さんたちのように地域を越えてつながっていく動きは、今後色んなところで増えていくかもしれない。
ここで話は終わらない。
広場には「桜木町」と書かれたバス停がある。ここは無料バスの停留所でもある。65歳以上の高齢者が40%を占めるこの地域では、病院へ通う人の数も多いそうだ。「ここにベンチがあったらみんな腰をかけてバスが待てるなぁ」ベンチの組み立てを手伝ってくれた地元のお父さんが嬉しそうに言った。
お父さんが広場について少し話してくれた。この土地は、元々広場だったが、震災以降は瓦礫置き場と化してしまった。その後、沢山の人の力により空き地にまで復活した。「津波で土を全部持っていかれちゃったから土入れを4回したなぁ」。この土地を元のような広場に、今までのように人が集まる場所に戻したいという想いから、花壇づくりやベンチの設置を考えた。
聞いた話によると、ベンチが置かれた広場は、早速地元の人々の憩いの場になったそうだ。今日も桜木町のバス停は「待ってたよ」と言わんばかりにこっちを向いているだろう。
(取材班 山田エリナ)