11月24日(土)、大船渡市赤崎町の後之入(のちのいり)公民館にて、マジカルパフォーマー・タップリンさんによるマジックショーが開かれました。 後ノ入地区は、大船渡湾の最も奥まった部分の北東側、南リアス線を挟んで内陸の山裾近くに位置しています。
同地区内にある後ノ入仮設団地、後ノ入第二仮設団地には、同地区のほか、海沿いに位置する跡浜(あとはま)地区や生形(おいかた)地区などで被災された方なども入り、あわせて78世帯の方が避難生活を送られています。
後ノ入地区から跡浜・生方地区方向
2年前から後之入公民館の館長を務められている鷲田盛(わしだ・さかり)さんによれば、このあたりの海には昔、美しい渚があり、牡蠣養殖や海苔養殖も盛んだったそうです。しかしその後、海は大きく埋め立てられ、現在、漁業を生業にする方はほとんどいないそうです。
この日の会場となった後之入公民館は地域のほぼ真ん中を流れる後ノ入川沿いにあり、2つの仮設団地からもほど近い場所にあります。鷲田さんによれば、震災時、津波は海から約1km離れたこの公民館のすぐ手前まで押し寄せたそうで、さらに、後ノ入川沿いにはずっと奥まで逆流していったということです。
マジカルパフォーマー・タップリンこと、大西広行さんは香川県のご出身。現在は愛知県に拠点を置きながら、全国各地の商業施設や福祉施設、病院や子ども会などを巡り、楽しいマジックショーを開いています。
東日本大震災後、大変な状況にある被災地のみなさんに少しでも笑顔になってもらえればと、たびたび東北を訪れ、今回は6回目。石巻~気仙沼~陸前高田とショーをしながら北上し、この日、ここ大船渡・後之入公民館にやって来ました。
午後1時の開始を前に、公民館に設備されている地域内放送でマジックショーの開催がアナウンスされると、間もなくたくさんの方が集まってきました。
タップリンさんのショーはマジックにとどまらず、バルーンやジャグリングなども交えた、スピード感あふれる非常に楽しいもの。子どもからお年寄りまで、すぐさま目は釘付けに。会場からは幾度となく「わぁー!」っと歓声が上がり、惜しみない拍手が送られていました。
さらにタップリンさんの持ち味は「タップリン節」とも言える軽妙なトーク。見ている人たちの心をググっと掴み、ひっきりなしに会場を沸かせます。ときには会場のお子さんなど、お客さんを舞台に引っ張りだし、そのユーモラスなやり取りで会場中を笑いで包みこんでいました。
ショーが終わってタップリンさんが取り出したのはたくさんの「皿回し」用のお皿とスティック。
「どうぞみなさん、ご自由に、やってみてください」
すぐに飛びついたのはもちろん子どもたち。続いて女性たち、ついにはお父さんたちも!さらにはスタッフまで・・。みんなじっとしていられず、次々とスティックとお皿を手にして皿回しにチャレンジです。童心に帰るとはこのことでしょうか、みなさん一心不乱に何度失敗しても落ちた皿を拾い上げてはスティックに載せ、皿回しを続けます。チャレンジの結果なかには上手に回せるようになった方もいらっしゃいました。
ショーを終えたタップリンさんは、「いつもそうなんですが、じつは僕のほうがとても元気をもらっているんです」とおっしゃっていました。
大広間の後方ではまごころネットによるお茶っこコーナーと、タップリンさんの奥様、小百合(さゆり)さんによる「クリスマスのリース作り」のコーナーも設けられました。
リース作りでは、用意されたベースとなるリースに、参加者が思い思いに様々な色のお花やビーズ、モールなどをつけていきます。小百合さんの指導で、みなさんほどなく、とてもかわいいリースを作り上げました。
後列、右端がタップリンさんの奥様、小百合(さゆり)さん
このリース作り、最初、参加者はお母さんたち女性ばかりだったのですが、皿回しで心も体もほぐれたお父さんたちも途中から参加。これまた見事に可愛らしいリースを作り上げていました。
参加された方に、作ったリースをどうされるのか伺うと、
「2歳と1歳の孫へのプレゼントに」「仮設の風除室の戸に付けてみるかな」「なんもかも津波で流されたけど、孫にあげたい」
といった言葉が返ってきました。
深まりゆく秋。
後之入公民館は戸外の寒空を吹き飛ばすような、楽しい熱気に満ちた週末となりました。