会場からいただいた質問のなかに、「ボランティアが被災者の自立をさまたげているのではないか」と新聞で報じられていたとの声がありました。
被災地の現状とボランティアが行なっている支援の工夫について、各団体が答えました。
Q.自立をさまたげない支援について
参加者(男性): 9月に遠野まごころネットで個人ボランティアとして活動をしたものです。
「ボランティアが住民の自立をさまたげているのではないか」という新聞記事を見ました。ボランティアは、どのくらい自立をサポートすればよいのでしょうか。
また、今後は、これまでやってきた泥かきや心のケアは減っていくと思います。これからボランティアが関与していくのはどういう部分なのでしょうか。自立をさまたげない支援とはどういうものなのでしょうか。
A.被災者、ボランティア、企業は共存できる
多田一彦さん(遠野まごころネット): はじめに、マスコミが「自立をさまたげるのではないか」と書いたことについて答えます。
マスコミの中でも、とくにテレビはある程度、ストーリーを組んでから取材にきます。そして、ストーリーに取材をはめようとします。私は「そういう取材の仕方は間違っている。まず現実をみて、必要だと思うことを報道してほしい」と話をしたことがあります。しかし、取材者が現実を見てしまうと、事前に考えたストーリーとずれてしまいます。
マスコミの方たちにお願いしたいのは、東京で考えて電話で取材をし、ちょっと話を聞いたくらいで書かないでもらいたいということです。被災地には何が必要で、どういう問題があって、どのように対処すべきかをしっかり認識してから報道すべきでしょう。
ですから、私たちも報道をそのまま受け止めてしまわないようにしましょう。
次に、被災者の自立についてです。私は、被災者、ボランティア、企業は必ず共存できると考えています。うまく調整すればいいだけなんです。
ボランティアが勝手に、自分たちがやることについて、自分の思いだけを表現しようとするというようなことは、共存に結びつきません。
そこを大事にしていけば、必ず被災者の自立もボランティア活動も企業もうまく共存できると思います。
A.自立のためのニーズ調査を実施
臼澤良一さん(遠野まごころネット): 私のプレゼンで、被災者にも格差があるということを申し上げました。広場の運営にあたって、仮設住宅に入居されている方のニーズ調査を行います。
自立できない方へはまごころネットなどを通じて支援をします。それなりに力のある人は自立していただく。それ以外の人はできるかぎり自立へ向かうようなサポートを行う。ニーズ調査をすることで、きめ細かなサポートができると思いながら活動しています。
A.できる作業はしていただく
斎藤正宏さん(遠野まごころネット): 私たちは、気を抜くとボランティアの進駐軍になってしまうでしょう。どういうことかというと、被災者へ物やサービスを与えつづけてしまうということです。私は、瓦礫部隊のボランティアたちに「自分たちは風なんだ。跡を残すことを考えるな」と伝えています。
また、カフェ部隊などで野菜を持って行くときに、渡すだけじゃなく、避難所の状態がひどかったときにはきれいに洗って、スーパーで包装されているような個別包装をしていました。しかし、あるときそれをやめました。仮設住宅への入居がすすんで、入居者のコミュニティが少しできるようになったら、箱に野菜をそのまま入れてお渡しし、入居者同士で仕分けの作業をしてもらうためです。
仮設入居者が野菜を仕分けるなどの作業を一緒にすることで、コミュニティのはじまりにしてもらいたいということと、ボランティアも個別包装をするのはたいへんですから、していただけることは分かち合っていただきたいという考えです。
仮設入居者の自立を阻害しないということを自戒として持っておきたいと思います。
A.最終目標は物資支援の停止
菊池新一さん(遠野まごころネット): 遠野まごころネットで物資の支援を担当しています。我々の作業の最後の目標は、物資の支援をストップすることです。
そのために、物資を配送しながら世帯の状況を把握する調査をしています。陸前高田と大槌で4,300世帯が仮設住宅に入居しています。そこの8割程度に調査を行いました。
先日、関係者で会議を行ったのですが、収入のある世帯からは、そろそろ支援をフェードアウトしようという話がでています。それが本当にいいかどうかはわかりません。
試しに、地元の産地直売所の軽トラックに野菜を積んで私たちと一緒に仮設住宅に運んでもらい、お金を出して買ってもらうということをやってみました。そうすると買ってくれるようになりました。支援のフェーズが変わっていると判断しました。
どうしても所得がない人。年金受給者や高齢者については支援を継続しますが、それも徐々に、工夫をしながら減らしていきます。どういう手法があるかということを、少しずつ手応えを掴みながらやり続けていこうとしています。
A.自立に向けて悩みを共有
大関輝一さん(NPO法人自立生活サポートセンターもやい): NPO法人自立生活サポートセンターもやいでは、東京で生活困窮者の支援をしています。私も東京で相談員をしていました。
「自立をさまたげないで支援をする」というのは永遠のテーマです。ずっと私はそうした活動を行なっていますが、わかりません。悩むしかないと思っています。また、利用者と一緒に悩むことが仕事かなと思っています。この人にとって、物資をあげたりサービスをしたりすることが果たしていいんだろうか、悪いんだろうかというのはわからない。でも、わからないなら、その人と話せばいいと思っています。私はそのようにしています。「私はこう思っています。あなたはどう思いますか? あなたへの支援だから、一緒に考えていきましょう」と言います。
マザー・テレサは「一対一が基本だ」と言っています。「被災者」という人はいません。一人ひとりの人生で、名前を持った人たちです。自立というのは難しいが、行政と違って個別のサポートをどうするのかということにおいては悩むしかないと思います。
A.「もういらない」といわれるまではボランティアを続ける
参加者(女性) まごころネットが自立を促進する活動をしているなかで、今回の報告会を開いています。その主旨はボランティアに来てほしいということではないでしょうか。
遠野まごころネットから「ボランティアはいりません」という言葉を聞くまでは、我々個人ボランティアは継続の姿勢でいいと思う。遠野まごころネットが責任をもって悩み続けていただき、個人ボランティアはそれを信じたい。
~つづく~