「泣いてばかりの住民を見たくない。元気を取り戻してほしい」この想いが下矢作(しもやはぎ)住民で結成された「たねっこまくべぇ会」の起源だ。8haの広大な土地にひまわりの種を撒く。震災前は水田だった。昨年は粘土を団子状にし、ひまわりの種を入れたひまわり団子をつくって撒いた。
まだ残る瓦礫の中、ひまわりは堂々と咲き、見た者を笑顔にした。塩害対策の意味も込めたひまわりが咲いたときは、ホッと胸をなでおろした。
そして「もっとみんなに笑顔になってもらおう!」と今年もたねっこまくべぇ会は動き出した。5月には私たちまごころネットも第一回、第二回と整地作業のお手伝い。種撒きプロジェクトにも参加。
あれから3か月が過ぎ、下矢作地区に名所と言わんばかりの見事な「ひまわり畑」が出来上がった。
下矢作小学校仮設住宅のお母さんは満開に咲いたひまわりに「最高だね」と目じりを下げる。「本当にすごいんだから!あそこはここいら(ここ)の人と、遠くからも沢山ボランティアの人が来てくれてみんなで植えたんだよ」と、誇らしげに語るお母さんたち。
道行く人も車を止め、写真に収めていく。
ひまわりが咲くこの土地は、今秋から測量が行われ、区画整理事業が予定されている。
「下矢作川の河川修復工事の人も喜んでくれたかな?」と村上誠治会長が笑う。
先月九州北部豪雨により、たねっこまくべぇ会の支援者に被害が及んだ。
村上誠治会長は「今までの恩返しをしたい」と考える。「小袋に分けて支援してくださった方にお返ししたり、陸前高田でボランティア活動してくれた方に持って帰ってもらえたらいいなぁ。みなさんの地元で咲かせてほしいんだよなぁ」と陸前高田から元気の源、ひまわりをお届けする予定だ。
これから刈り取り作業や、長谷の手配など準備が必要になる。現在、会で案を出し合っている最中にある。
笑顔を思い浮かべて撒いた種。復興への想いを込めて撒いた種。
その種が今、新たに感謝の種として人々を繋いでいく。
(文・写真 山田エリナ)