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郷土復興へのビジョン:高橋勇樹さんインタビュー(2)

2011年9月12日  10時52分

■仮設商店街から新たなビジネスモデルづくりを

地元の経営者で集まって話をすると、働く場所が全体的に少ないという声が出る。だんだん人口が市外に流出して、せっかく復興しても街に人が戻ってこないのではないかという危機感もある。それを防ぐためにも地元の経営者のなかで仮設商店街を作ろうという動きがある。用地確保や資金集めを考えているなかで、ファンド(を組成する)という話なども出ている。ファンドは本来、出資者にそれなりのリターンを返さなければならないものだが、現在の高田の状況では、高いリターンをおそらく返せない状態だ。だから出資者の方々には高田の応援のためにというご理解やご協力を頂きながらファンドを大切に運用させてもらう形になるのではないかと考えている。こちらに応援に来てくださっている様々な企業やファンドマネジメントをしている方などの知識や助けなども頂きながら、仮設商店街の構想を練っている。 

陸前高田、未来のイメージ

例えばエコタウン構想など、様々な店舗が使うエネルギーの供給はすべてバイオマスや太陽光発電などの自然エネルギーで賄う。高田の街はこのような仕組みで復興していくというミニ版の仮設商店街(経済地域・産業地域)を構築してそこで私たちが店をやってみる。商店街の店はそれぞれ連携していて、八百屋さんはすべて地元の農家で作った野菜を仕入れ、商店街のなかの飲食店やホテル等も地元の食材や製品を使うことで新たなアウトプットを作りだす。このような仮設高田復興街ができれば理想だ。 

―――気仙沼の牡蠣の養殖のように、お金ではなくて現物で還元をするやり方もあり、東京や大阪など遠くから支援したいという人もいるのでは。 

そのことに理解を示して出資してくださる方がいればありがたい。陸前高田の街はもともと震災前から地域的にも経済的にも停滞気味だった。今回このような大震災が起きて、今後義援金や復興支援などが入ってきたとしても、はたして今までよりもよくなることができるかどうか。ただ、私たちは陸前高田というこの街にこれまでどれだけお世話になったかということを忘れてはならない。私たちがここで高田を見捨ててしまうと、高田に住んでいる子供たちまで見捨てられてしまうことになるのではないかと思う。だからなるべく残って頑張ろうとしている若い人たちにも集まってもらって、(陸前高田の復興に向けた)意識を共有していくことも大切だ。 

また、シャッター街をつくらないためにも経営者には勉強が必要だ。これまではどんぶり勘定で経営をしていた人も多かったかもしれないが、やはり長期的なビジョンをしっかりと持たなければならない。8年という復興期間は、様々な人たちが協力して商売が成り立つかもしれないが、そこで(事業再生の)基礎をしっかりと固めて、8年後にはそれを生かせるような計画作りを私たちも勉強会などを通して考えて実行していかなければならない。各分野にいろいろな支援のパイプもできつつあるので、地元のみんなで情報共有をしながら協力していくことが大事だ。中小機構(中小企業基盤整備機構)の場合、現在は貸店舗での営業が2年間しかできないことになっている。これでは、3年後は自分で店を建てなければならない状態になる。はたして3年後に店を建てられるだけの資金が集まるかということも考えておかなければならない。2年間だけで「ハイ、おしまい」では話にならない。思いで動くことも大事だが、思いだけではなく、きちんとした計画性がなければ途中で挫折してしまう。 

がれきの撤去については、膨大な量なので1~2年はかかるのではないか。それが最近は一か所に集積されて、予想よりも早いスピードで片付いてきている。他の市町村に比べて高田はダントツに早いと思う。しかし、(がれきを片付けても)高田には平地の市街地が少なく、建てる用地がない状態のところが多い。建てるとしても高台などに限られる。土地の価格が上昇しているという背景もあり、再建を躊躇している人も多い。自然破壊につながるので、大規模に山を切り開くこともおそらく難しいだろう。 

私たちも勉強会で集まって街の復興ビジョンを考えているところだ。高田の近くの高台付近は市街地として戻るだろうとか、海岸線から何キロぐらい離れたところまではもう建てられないだろうとか、限られた平地と今まで開発していなかった地区を商業地にしたらどうかなど様々な意見がある。高台を崩してできた土で被災地を土盛りするという話もあるが、土盛りするにもどのぐらいの土が必要かわからない。どこがどうなるかは市や県もおそらくまだ見えていない状況だろう。予算もいくらかかるのか、すべてがまだこれからだ。 

漁業では…仮設のいかだで(養殖の)仕込みができるように

―――震災後の街づくりのマスタープランが出ないと見えてこない部分も多いが

そこは地域の皆さんにとって最も関心が高いところだ。高田はいちから新たに街をつくらなければならない。しかし、そのことを行政にまかせきりにするのは良くないことだと思う。待つだけではなく、市民も行政にかかわるべきだと思う。ひとりひとりが考える街のイメージなど、市民の意見を提案しながら行政に参加していくことが大事だ。そういう意見が集まれば集まるほど行政側も動きやすいはず。市としてはこういう要望が市民から出ていたと県や国にあげることもできる。 

―――漁業の再生についての展望は

私は漁業に詳しくないが、この前ある知り合いに聞いたところ、助成金や補助金をあてにしていたらとても間に合わないので、現在は仮設のいかだを自分たちで作って(養殖の)仕込みができるよう先行して取り組んでいるという話だった。陸前高田の広田湾、米崎は牡蠣の養殖がブランドとして浸透しているので、それをもう一度復活させようという動きはある。牡蠣などはうまく今回の震災を機にいろいろな技術を導入して、新たな付加価値がつけばもっとビジネスの幅が広がるチャンスではないかと思う。

(聞き手:高橋和氣、まとめ:高崎美智子)

 ~つづく~

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「陸前高田市広田町大野地区のコミュニティ施設設営事業」は 「平成23年度(復興支援)被災者支援拠点づくり活動補助事業」の 助成金の補助をいただいています。