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被災地復興支援ボランティア活動報告(5) – 9/18,19

2011年11月10日  09時00分

被災地復興支援ボランティア活動報告(5) - 9/18,19

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IT関連企業勤務 横浜在住 塚田 将
日程: 9/18(日)、19(月)
場所: 岩手県遠野市
団体: 遠野まごころネット

内勤

遠野まごころネットのボランティアセンターの運営も、ボランティアスタッフが行っており、これを「内勤」と言います。
つまり、ボランティアのためのボランティアです。
朝は他のスタッフと同様、AM6時に起床しますが、AM8時に現地作業のスタッフが出発するまでの間の主な作業は、新規参加者の受付、現地スタッフの問合せ対応、出発前の朝礼の準備、ゴミ出し等があります。
特に、休日は朝からの受付が多く、バタバタします。
現地スタッフが出発した後は、各自朝食を取り、館内の清掃・片付け、名簿の更新等の事務作業、必要物資の補充、設備の修繕・修理等をします。
現地スタッフが戻るPM4時頃までは、比較的時間に余裕があります。
現地スタッフが戻ってからは、ビブスの洗濯、館内の見回り、問合せ対応等を行います。
また、朝よりも夜の方が受付が多いです。
PM10時の消灯後、残りの仕事を片付けて、就寝します。
内勤スタッフは、専属というわけではなく、日によっては現地に行くこともあります。
私はこれまで現地作業を行っていましたが、今回は、内勤スタッフとして活動しました。
これによって、ボランティア活動に必要なものが、新たに色々と見えてきます。
センターを提供する社協、参加する様々なNPO、各分野の専門家を始め、通常は中々接点のない人達との交流が増え、現地作業に比べて、多くの人脈が自然と築かれます。
内勤は力作業ではないので、女性や年配の方でもできます。
長期間ボランティアのスタッフが、現地作業の中日に、静養がてらスポットで、内勤をすることもあります。

遠野まつり

遠野まつり・一日市南部ばやしの山車

9/18の朝、現地スタッフを送り出した後、受付の前で作業をしていたところ、遠野まつりの手伝いをしてほしいとの依頼が飛び込んできました。
市内の一日市(ひといち)通りの商店で結成される「一日市南部ばやし」という団体の山車を押す人手が急に足りなくなったということでした。
この日の内勤スタッフは十分にいたので、私が手伝いを申し出ました。
山車を基地から会場まで押して運び、ステージの横につけました。
AM10時に祭が始まってからは、しばらく祭を観覧する時間ができました。
ステージでは、陸前高田市、大船渡市、山田町といった、遠野市が後方支援を行っている被災地から元気を届けに来た郷土芸能団体が、太鼓や舞いを披露してくれました。
どれも地元に根付いた力強い演舞で、これからも東北・岩手は力を合わせてがんばろうと伝わってくるようで、励まされました。
震災で亡くなった団員もいるようです。
私も5月の陸前高田市、大船渡市の街の姿を思い起こしていました。
日本人は昔からこうやって災害を乗り越えてきたのかなと思いました。
遠野市地元の南部ばやしの皆さんも、演舞を披露しました。
山車の上では、紋付き袴を身に纏った男の子達が太鼓を叩き、ステージの上では、綺麗な着物や装飾で着飾った女の子達が舞いを舞いました。
時間は正午を回り、皆さんと集合写真を撮った後、PM3時からの「まちなか回り舞台」まで、昼食休憩となり、酒盛りが始まりました。
そこで、酋長の方から、遠野で唯一の地酒である「国華の薫」(こっかのかおり)を頂きました。
さすが米所の酒で、辛口でコクがあり美味しかったです。
ほろ酔いの中、まちなか回り舞台が始まり、AMに会場で披露した演舞を、今度は、市内を回りながら、披露しました。
沿道には、多くの人が集まっていました。
2時間近く山車を押したおかげで、すっかり酔いは醒めました。
祭が終わり、山車を基地に戻した後、酋長の方から、お礼にと国華の薫の一升瓶を頂きました。

この地方には、「結い」(ゆい)という考え方があるようです。
ひと所に皆で身を寄せて、自然の恵みを共有し、人と人との結び付きを強くし、絆を築いていくというものです。
1本の大根を輪切りにして皆で分け合うのではなく、ひと所で1本の大根を調理し、それを皆で集まって食するということです。
土着文化として、助け合いの精神が根付いています。
それ故に、未曾有の大災害の渦中にありながら、秩序が保たれ、被災者同士で少ない物資の譲り合いが普通に行われていたのだろうと思いました。 政府・行政のバラマキとは大違いです。
バラマキでは、人と人との結いも、個の中の公の意識も生まれず、人間関係が希薄になります。
一時期、関東で見られた買い占めは、これの顕れではないかとも思いました。
そんなときでも、東北では、ライフラインが寸断され、雪の降る寒い中、避難所に身を寄せ、少ない物資を分け合っていたのです。

遠野まごころネット第2回構成員会議

前回のレポートでお伝えした、大関輝一氏の論文に感銘を受けた私は、論文に掲載されていたメールアドレス宛に、お礼をお伝えしたところ、その後、何度かメールで情報・意見交換をさせて頂きまして、9/19の13:30から遠野市民センターでまごころの構成員会議が開かれることを教えて頂きました。
大関氏は、大船渡市担当のシンポジストとして参加されるとのことでした。
その日も内勤でしたが、PMに時間をもらって私も参加しました。
配布資料を見ると、始めのページに、月別のボランティア総数の推移が示されていました。
3月の300人から始まり、5月の12,000人をピークに、その後減少を続け、8月は7,000人を割りました。
8月は、学生・社会人の長期休暇があるにも関わらずです。
GWの短期スタッフの回転率を考えると、総人数の減少は、必ずしも総工数の減少を示すものではないと思いますが、新規スタッフの参加数の減少、既存スタッフの離脱数の増加を示している可能性があります。
マスメディアによる誤認を誘発する報道、既存スタッフの経済的な息切れに起因するものかもしれません。

収支の実績を見ると、支出の半分は「バス借上料」、他に「車両燃料費」、現地作業で使用する「機材・消耗品他」を合わせると、支出の9割り近くを占めます。
現状、支援金等の収入よりも支出の方が多いため、年末まではマイナス収支が続く見通しのようです。
年末年始にかけて、補助金により充当する予定のようで、年明けにはマイナスを回復する考えのようです。
まごころの代表曰く、後方支援はお金がかかるということです。
一部の地域が後方支援を担うのは、限界があります。
ヒトというリソースで支援を行う拠点は、被災地に近い必要がありますが、モノ・カネ・情報で支援を行うことは、被災地から離れていてもできます。
後方支援を多層化し、フロントの支援をバックアップする支援の仕組みが必要です。

パネルディスカッションでは、「仮設住宅のフォローについて」というテーマで、話し合いが行われました。
コーディネーターは、まごころ副代表の菊池新一氏、パネラーは、同大槌町担当の梶原敬介氏、同陸前高田市担当の斉藤正宏氏、同大船渡市担当の大関輝一氏、被災地NGO協働センター代表の村井雅清氏、静岡県ボランティア協会常務理事の小野田全宏氏、東京大学名誉教授の似田貝香門氏です。
8月で岩手の避難所は全て閉鎖され、被災者は仮設住宅へ移住したのですが、様々な問題が表面化してきているとのことです。
孤立感の高まりから、閉じこもり、寝たきり、孤独死が見られるということです。
大槌町の仮設住宅の支援では、3名の方の死に直面し、中には自ら命を絶った方もいたようです。
地震・津波の難を逃れても、数ヶ月後に失われる命があるということです。
ボランティアは、これを防ぐために、仮設カフェ、足湯等により、心のケアと共に、コミュニティの再生を図っています。
しかし、ここにも問題があります。
コミュニティには、元々、地域性があります。
仮設住宅の入居は、抽選により決められたため、同一のエリアの仮設住宅に、異なる地域からの被災者が集まってきているため、コミュニティが形成されにくく、孤立化を助長しているようです。
更には、同一の被災地内にも被害の規模の違いがあったり、仮設住宅の入居時期の違いがあったりすることから、この不合理な格差による、被災者同士の確執もあり、コミュニティ形成の阻害要因になっているようです。

加えて、在宅被災者の問題も浮き彫りになってきています。
在宅被災者は、所在の把握が困難であることから、行政の支援が受けにくいだけでなく、ボランティアでもカバーしきれていないということです。
支援のための情報さえ十分に伝わってきていないのです。
そのため、周囲でコミュニティが形成されても、その輪の中に入るきっかけが得られず、支援の薄さも相まって、孤立感を高めてしまうことになります。
また、支援の方法にも問題があります。
各団体(行政、NPO、協会、学生等)、各専門家(医療、法律、ケア等)が、十分に連携が取れていない中で、それぞれが支援を提供しているため、支援が乱立しており、結局、被災者には分かりにくく、混乱させるだけだといいます。
同じ被災者に対して、異なる支援者が、支援目的で、同じ質問をしたり、学術機関等が、調査目的で、支援等のフィードバック無しに、ヒアリングを行ったり等しているため、被災者はうんざりして、調査疲れを起こしています。
加えて、支援者が、被災者からニーズを預かっても、その対応の専門家であるとは限らず、その場合、最適な支援者へとつないで、支援を確実にする必要がありますが、その連携が十分に行われていない、もしくは、連携に時間がかかってしまっており、被災者は待ちくたびれて、諦観されている方も多いといいます。

支援者は、当事者を代弁することが求められます。
各団体、各専門家が連携して支援メニューを出し合い、被災者が享受できる支援を分かりやすく体系化し、ニーズの対応に最適な支援者へつなぐネットワークを構築し、所謂、「支援のワンストップ化」の実現を目指すべきとのことです。
調査をするからには、被災者にその目的を説明し、それがどのような効果をもたらすものかを明確に示す等、説明責任を果たさなければなりません。
そして、被災者との約束は、決して宙ぶらりんにはならないようにし、確実に実行することが必要です。
それ無しには、被災者との信頼関係は築けず、支援することができなくなります。
このように、まだ多くの課題に直面していますが、少しずつ改善の事例もでてきています。
被災者自らが、仮設・在宅皆で、小さな畑を始める試みが見られてきました。
これにより、コミュニティの再生を図るとともに、生産活動を通して、明日への希望を共有しています。
また、仮設住宅の増加に伴い、各エリアの管理人設置のニーズが発生していることから、北上市の助成を得て、被災者を管理人として雇うことにより、雇用の創出も行われているようです。

大関輝一氏との対談

構成員会議の後、大関氏の車に同乗させて頂き、遠野駅近くの喫茶店で、復興支援のIT活用と被災者の雇用創出について、情報・意見交換をしました。
私は、自分のスキル・チャネルを活かして、今回の復興支援のみならず、今後の災害に備えるために(大関氏が言われるところの「災害に強い社会にする」ために)、ITにできることを考えていきたいと考えています。
人を救うのは、人・モノ・金によるところが大きいと思いますが、それらをつなぐ情報もまた、人にとって重要なリソースであると思います。
特に、情報をITで処理することにより、空間的な制約が無くなるという特徴が生まれますので、遠隔地とつながることができたり、物理的に認識が難しいものを可視化できたりするようになります。
例えば、コミュニティサイトを使用することで、平常時は、国内外の家族・友人達とコミュニケーションを取り、非常時は、安否確認、ニーズ・リソースのマッチング、行政・地域医療との連携、NPO・ボランティア団体間の連携等ができるようになります。
また、GPSによる位置情報と地図情報を使用することで、平常時は、目的地へのナビゲーションや待ち合わせを容易にし、非常時は、食料等が手に入る場所へのナビ、避難所・仮設住宅・自宅に分散する被災者の所在・状況の確認等ができるようになります。
加えて、行政が保有する資料、個人が保有する印鑑・通帳等、実体を保有している(局所化されている)が故に、紛失・破損が生じるわけですが、これを電子化しておくことで、冗長的なバックアップが可能になり、自然災害等の予期せぬ脅威から、権利・財産を守ることができるようになります。
これらの多くは、既に実現されているように思われますが、大関氏のレポートで示されている全ての課題・ニーズの解決に近づけるためには、まだまだITエンジニアの知恵出しと努力が必要と感じています。
現状、被災者のアセスメント情報は、紙ベースのカルテのようなものを使用して、支援者間での共有を図っているようですが、IT化することで、被災地の各地で活動する支援者同士の情報共有や、ニーズの対応に最適な支援者への引継ぎが容易となります。

民間企業にできること

Hack for Japanのようなコミュニティでは、瑕疵責任や保守対応が果たせないと思いますし、運用を開始しても息切れすると思いますので、体力と信用のある民間企業がビジネスとして、お金が動く仕組みを作らないと、復興や新たな街づくりは進まないと考えています。
現在、私が検討しているのは、復興支援のIT活用と被災者の雇用創出のために、IT関連企業である自社とNPO法人(まごころ、もやい等)とが連携をして、行政の助成やクラウドファンディングにより資金調達をし、クラウドソーシングにより、被災して失業しているITエンジニアや事務作業のできる方に、防災・復興支援のITソリューションの開発・保守・運用を委託する、というスキームを実現できないかということです。
クラウドソーシングに関しましては、自社のクラウド基盤を使用することで、在宅勤務、仮想開発環境提供、リモート運用・保守ができますので、技術的には実現可能と考えています。
クラウドファンディングに関しましても、金融システムの事業部の技術・ノウハウ・チャネルにより、技術的には実現可能と考えています。
検討しなければならない課題としては、上述のスキームの5W2Hとその実現可能性です。
法務・調達にも確認の上で、合法的なサービススキーム、ビジネススキームを組み立てることを考えています。
そして、被災者の方の正規雇用につなげるスキームも検討しなければならないと考えております。
これは、人事との連携が不可欠です。
グループ全体が雇用の受け皿となり、開発、SE、システム、製品・サービス、グローバル、リーダーシップ等、有能なスキルを保有する人材の獲得につなげます。

災害の現場に来ないと手に入らない情報や人脈が非常に多いです。(マスメディア、ソーシャルメディアでは得られません)
そのことを知る企業もあり、遠野まごころネットには、当初から、多くの社員を送り込んできているところもあります。
日本の社会インフラを担う企業グループにしかできないことがあると思います。
現在、自社に限らず、グループ全体で復興支援を行っています。
日本を災害に強い社会にしていくために、グループ全体で防災、復興、街づくり(スマートシティ含む)を支援する事業を創出することが私の大きな目標です。

「陸前高田市広田町大野地区のコミュニティ施設設営事業」は 「平成23年度(復興支援)被災者支援拠点づくり活動補助事業」の 助成金の補助をいただいています。