岩手県の高校生をドイツに派遣し、異文化に触れ、見聞と視野を広めてもらい、将来の東北復興の力になってもらうことを目的とした「翼」独日高校生交流プロジェクト。2年目となる今年、4回のオリエンテーションを経てドイツ・ベルリンに渡った6名の高校生の旅をレポートします。
まずはじめに「翼」独日高校生交流プロジェクト2014に関わって下さった多くの方々に感謝申し上げます。
◯滞在レポート(2014年7月29日〜 8月7日)
7月29日(火)
翌日の出発に備え、全員成田へ移動。
夜は遅くまで、ドイツでおこなう全体発表のプレゼンテーションを練習しました。多田理事長から色々なアドバイスをさせていただきました。
7月30日(水)
いよいよドイツ・ベルリンへ。
昨日のプレゼンテーション練習の疲れも見せず、皆元気に日本を出発。今年も絆・ベルリンの廣瀬さんが日本から同行してサポートをしてくださいました。
13時間以上の長旅を終え、到着したベルリン・テーゲル国際空港では、このプロジェクトの主催者である絆・ベルリンの福澤代表、副代表のフランク・ブローゼ氏、ブリギッテ・ブローゼ氏ご夫妻ほか、メンバーの皆さま、そしてお世話になるホームステイ先の皆さまがお出迎えしてくださいました。
派遣生は心なしか少し緊張気味です。
ブリギッテ副代表からは一人一人にバラの花が手渡されるおもてなしも受けました。他にもブリギッテ副代表は今回の滞在中ずっと細かな気配りをしてくださいました。
7月31日(木)
プログラム初日、本日は絆・ベルリンの小林さん・ガブリエルさんの案内の下、ベルリン市内の史跡を見学しました。
見学先は、歴史のあるブランデンブルク門やユダヤ人のホロコースト記念碑、ベルリンの壁記念館などです。事前に、小林さん・ガブリエルさんが用意してくださったドイツの歴史の資料で勉強していましたが、今日は実際に史跡を目の前で見ることができました。
ベルリンの壁の出来た背景、当時の状況や亡くなった方々のお話しに、派遣生は皆真剣に聞き入りました。
午後は、派遣生は引き続き市内見学。多田理事長は絆・ベルリンのフランク副代表がご案内してくださった「USE」と言う、障がいをお持ちの方々の物作りの工場を見学させていただきました。この工場では、ピアスや小箱と言った小物類からベンチやイスのリフォームと言った家具作りまで様々な作品を作っています。どれもクオリティが高くデザイン性にも優れ、同じように物づくりをしているまごころ就労支援センター釜石・おおつちでも見習うべき点が多々ありました。
8月1日(金)
この日は、絆・ベルリンの副代表であるブローゼ御夫妻が事前に細かい調整をしてくださっていた、かつてのベルリンの壁に沿ってつくられた遊歩道「壁の道」の視察と、ドイツ森林保護団体青年部の自然保護塔での植樹運動をおこないました。
ベルリンの壁崩壊後の地域を復活させるため、これまでに約8万本の植樹活動を行っているこの団体のもと、派遣生も桜の木とリンゴの木の植樹をさせていただきました。周りの木々は、よく見ると壁崩壊後に植樹した部分はまだ背丈が低く青いです。
また、地元の新聞記者の取材も受け、派遣生は「歴史の重みを感じる」「植樹を行ったり努力の積み重ねが日本の復興と繋がる」とコメントしていました。派遣生にとって色々な事を考えさせられる植樹となり、事前に植樹の調整をしていただいた、ブローゼ御夫妻には改めて感謝申し上げます。
ここには、当時のベルリンの壁の監視塔や逃走を図った人の収容部屋も残されており、昨日に続き壁の重みを突き付けられました。
2泊3日の行程で行われるワークキャンプの為、夕方、絆・ベルリンの代表の福澤さんのご自宅へ移動し、まず全員で自己紹介を行い交流しました。今回のワークキャンプにはドイツの学生さんが5名参加して下さいました。
8月2日(土)
ワークキャンプ2日目の今日は、朝から遠野弁版のラジオ体操を参加者全員で元気に笑いながら行いました。
そして今日は、日本で練習を重ねてきたプレゼンテーションの発表初日でもあります。震災についての全体発表は英語で行いました。地元のラジオ局からの取材も受けました。
震災時の日本の状況について「なぜ日本人は自分の気持ちを言わないのか」「原発についての個々の意見」なども聞かれ、派遣生はそれぞれ自分の意見を述べました。
続いての個人発表では、日本とドイツの若者がそれぞれお互いの国に伝えたい内容のプレゼンテーションをしました。絆・ベルリンのメンバーの方々からの講義も受け、盛りだくさんな内容となりました。
午後は、夕方から始まる歓迎パーティーの準備。日本から持ち寄ったお米とさまざまな具で、楽しくおにぎり作りをしました。男性陣は、テント張りです。その間、絆・ベルリン友の会の皆さま方はキッチンで美味しいお料理を作ってくださいました。また、ドイツで日本料理を営んでいる遠野市出身の梅坂様からはたくさんの日本料理もいただきました。
歓迎パーティーではヨーロッパを徒歩で縦断中の三好淳二さんも合流。生徒さんも制服に着替え、この日2回目となるプレゼンテーションをしました。ここでも参加者の皆さんの関心は原発についてで、日本の今の原発の稼働状況や寄付金の使われ方などといった質問を受けました。派遣生は一つ一つ真剣に答えていきました。
8月3日(日)
ワークキャンプ最終日のこの日は、少々疲れが見えましたが、昨日の続きで個人発表を行いました。最後は、絆・ベルリンの山田先生と福澤先生の講義を受けて、ワークキャンプ終了。派遣生は、ドイツの学生さんと仲良くなり良い思い出ができたようです。親切に交流をして下さったドイツの学生さん、そして何よりも大人数でのワークキャンプを快く受け入れて下さった福澤代表には、改めて感謝を申し上げます。
午後は、それぞれホームステイ先の方々と過ごしました。
8月4日(月)
午前中は、NPOベルリーナ・ターフェルにて、食品の仕分けのボランティア活動をし、勤めている絆・ベルリンのメンバーのヤーナさんからお話をうかがい、全体プレゼンテーションも行いました。
このNPOは、スーパーなどから出るまだ食べられる食品を回収・分別し、子どもや難民を支援する社会施設などに提供したり、教会で配布したり、子どもたちに将来食べ物を大事にしてもらうためのプロジェクト(料理作りなど)に使用したりしています。「食べられる物が多いと思った」「日本も見習うべき」と、派遣生も関心が高かったです。
午後は、在ドイツ日本大使館を訪問し、中根猛大使とお話させていただいたほか、プレゼンテーションもさせていただきました。
全体プレゼンテーションはこれで4回目となりました。派遣生は皆英語での発表にも慣れ、これまでの発表で受けた質問などから自身の意見や考えも発表の度に強く持てるようになり、アレンジも加えて素晴らしい発表ができたと思います。終わった後、皆ほっとした表情でした。
8月5日(火)
今日は、絆・ベルリンのバイヤーさんとヴェルナーさんの案内でドレスデンの町を見学。この町は、第2次世界大戦の爆撃で4万人もの人々が亡くなった被害の大きい町の一つでもあります。また、ヨーロッパの中でも美しい町の一つだったドレスデンには、今も昔の美しい建物がいたる所にあります。宮殿や教会などをたくさん見てまわったり、写真をたくさん撮ったりと、この日はみなさんたっぷりと見学しました。
8月6日(水)
今日は、絆・ベルリン友の会の菅井さんと原さんの案内の下、ベルリンの市内見学をしました。時代ごとの電車・船・飛行機などを展示している技術博物館やペルガモン博物館をじっくりと見学し、歴史に触れました。
また、広島に原爆が投下された日でもある今日、最後は空爆を受けた教会でキャンドルをともしました。技術博物館で大戦に使用された飛行機を見ていたこともあり、人間が犯した戦争の重みを突き付けられた一日でもありました。派遣生の事を気遣い、事前に綿密な見学の計画を立てていて下さっていた絆・ベルリン友の会のみなさまに感謝申し上げます。
8月7日(木)
あっという間の最終日。午前中はホームステイ先の家族とそれぞれ過ごし、16時30分の飛行機に間に合うように、空港へ移動。
空港にはお出迎えの時と同様に、絆・ベルリンのみなさん、ホームステイ先のみなさん、そしてワークキャンプで一緒だったドイツの学生さんもお見送りに来てくださいました。
別れを惜しみながら出発。8日(金)、日本に帰着しました。
2014年翼プロジェクト派遣生の6名の派遣生は皆、ドイツ滞在中にたくさんの事を経験し、考え、吸収して、成長したと思います。
今回の経験は、日本の復興について個々が新たに考えるきっかけになったと思いますし、自身の将来にも繋がる素晴らしい機会になったはずです。
改めまして、このプロジェクトに関わって下さった皆様、この報告には書き切れなかった多くの皆さまのご協力に、心から感謝申し上げます。
「翼」独日高校生交流プロジェクト
主催者 NPO法人 絆・ベルリン(ドイツ)
共催者 NPO法人 遠野まごころネット(遠野市)、ロバート・ボッシュ財団
後援者 在ドイツ日本国大使館、岩手県教育委員会、ベルリン独日協会、岩手日報社、東海新報社、テレビ岩手、岩手朝日テレビ、岩手めんこいテレビ、IBC岩手放送、エフエム岩手
2014年派遣生
小野寺 咲乃さん(県立一関第一高等学校 2年生・一関市)
佐藤 英貴さん (県立雫石高等学校 3年生・盛岡市)
土谷 香蓮さん (私立盛岡中央高等学校 3年生・盛岡市)
鈴木 茉緒さん (県立盛岡第三高等学校 2年生・紫波町)
菊池 真永さん (県立遠野高等学校 2年生・遠野市)
似鳥 煕さん (県立盛岡第一高等学校 3年生・盛岡市)